本が多すぎる:酒井順子著のレビューです。
感想「約束された幸福な未来」が、たくさん見つかる!
タイトルの通り、世の中本が多すぎる。
こんなにたくさんあるのに、自分の元へやってくる本はほんの一握り。だからこそ、出合った本とは濃密な時間を過ごしたいと思ってしまう。
本屋で劇的に出合う本はちょっと「恋愛結婚」に近い。
本を紹介してもらえる本は「お見合い結婚」に近い。
どんなに読みたくても一生のうちで読める本の数は限られているんだから、効率よく良書を・・・となると頼みの綱のひとつとしてこういった書評本を書いてくれる有能な仲人さんが必要となって来る。
今回、酒井さんのこの本を読んでいて、なんてこの仲人さん、サクサクいろんな本を紹介してくれるのだろう~と、大量に紹介される本のタイトルに飲み込まれながら、嬉しい悲鳴を上げてしまうのだった。
とにかくジャンルが広い。
酒井さんの鋭い洞察力はこういった本から吸収されて来ているのだと言うことも感じられる。
書評集というと、わりかし一作品を丁寧に評する内容のものが多いけど、本書は読書日記形式で、まず酒井さんのちょっとしたお話から入り、ある一日にだいたい3冊くらいの本が紹介されていく。
その3冊も、前の本と繋がりをゆるく持たせ、関連本というわけではないけど、これを読んだらこっちも気になった的な繋がりがすごく面白いのだ。この「つながり」の小気味よいテンポ、わくわくさが癖になり、たまりません。
簡潔。これだけたくさん紹介されていると、簡潔が逆にありがたい。
気づけばネットで予約ボタン。これを数回続けているうちに「いい加減にしろ、自分」と、ふと我に帰り、とりあえず最後まで読み切って、なお心に残っているものだけ選ぶ
という手段に出ました。
自分が昔書いた書評と同じ本の書評を酒井さんも書いていた。
シンプルなのにきっちり伝わってくる文章に思わず後ずさりしたくなる。
簡潔かつ読者に響くかつオリジナリティが・・・いやいやムリですが、出来ない子なりに何かを教えてもらった気がします。
ジャンルが広いので、必ず自分の読みたい本にぶつかると思います。
酒井さんの好きな、鉄道、歌舞伎あたりの本の紹介も多めにあります。
また、どんなジャンルの本であれ、人間考察をする鋭い目がキラリと光っている感じで、なるほどこういう視点で捉えてゆくのか・・・と、少しだけ酒井さんの頭の中を覗けた気がしました。
読みたい本が芋づる式に現れる時。
読みたい本が枕頭にそして机上にある時の嬉しさよ。
これは「約束された幸福な未来」が存在している証だと酒井さんは言う。
そうなんだ、そうなんだよ。積まれてゆく本の山を眺めながらも目を細めて安堵している自分がいることも重々承知しております。そんなことを何度も感じさせてくれる書評集でした。(悲鳴とともに)
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