茨木のり子の家:茨木のり子著のレビューです。
写真が語る「家は人なり」
茨木のり子さんのことはあまり詳しくはないのですが、何かの本でチラッとお宅を見たときからずっと気になっていた。
茨木さんのお顔のモノクロからはじまる本書。
その後何枚も掲載されている部屋の中の様子と彼女の雰囲気がとてもマッチしているなぁ~とまず感じました。
部屋というものはその人の人生そのものだなぁ・・・なんてことも考えさせられる。どんな物に囲まれ、どんな生活を送っていたのか?家主が居なくなっても、いまだひっそり息づいている生活の気配を感じながら眺める。
使い古された椅子
規則正しく並ぶガラスのコップ
長年も喋り続けていたであろうSONYの古いラジオ
びっしり本で埋まった本棚
電気のスイッチ盤に直に書かれた文字
オレンジジュースが40円だった頃に書かれた家計簿
梨が入った籠
余計なものはあまりなく、使いこまれて存在感を放つ物たちが、静かにそこにある。
ハングル文字で書かれたスクラップブックから、韓国語を学んでいたんだなぁ~とか、
小さなカメラで撮った写真から彼女が旅した道を辿る。
そして「わたしが一番きれいだったとき」を読めば、彼女がどんな時代に生きた人であったかが感じられる。茨木さんのことを知らなくても、この写真たちが十分彼女の人柄を語ってくれているような気がします。
わたしは茨木さんちの美しい小窓のついた玄関ドアがとても好きだ。そしてそのドアを開けるような感覚から始まるこの本もとても好きになった。