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【感想・あらすじ・レビュー】黄金比の縁:石田夏穂

 

 

黄金比の縁:石田夏穂著のレビューです。

☞読書ポイント 

職場で起こることを事細かに描ける石田さん。今回は人事部が舞台。理不尽な人事で、「人事部」に異動になったひとりの女性が反撃。恨みを晴らすべく彼女は「会社が不利益になる人事」を密かに実行するというかなり変わったお仕事小説。

 

感想(ネタバレなし)

黄金比の縁 (集英社文芸単行本)

黄金比の縁 (集英社文芸単行本)

 

ちょっとタイトルからどんな内容なのか想像がつかないけど、石田さんのことだからきっと今回も想像を上回る何かがありそうとワクワク。今年初めて読んだ「ケチる貴方」の、何とも言えない不思議な感じがちょっとクセになっている自分がいる。

 

その予想はやはり当たっていた。今回は(株)Kエンジニアリングの人事部で働く小野という一人の女性を描いたもので、これがまた単なるお仕事小説とはまったく違って、「え?え?」ってなっちゃうんです。

 

 

 

 

人事部の経験がない私には新鮮に感じた話だった。会社説明会に向けての段取りや採用に関することなど、確かに会社と人を結ぶ、ひいては、この先の会社の明暗を分けるともいえる人事採用なわけだから、人を見抜く力や、観察力を要する大事な部署なんですよね。

 

当然、主人公の小野も人事部に力を注いでいる―――と思えたのに、実は彼女は好きで人事部に居るわけではなかったのだ。「会社の不利益になる人間は、ウチの部署には置けない。」と上司に言われ、人事部に追いやられた。不当な異動に小野は会社に対して強い恨みを持つ。そして恨みを晴らす方法として、「会社の不利益になる人間の採用」を心に誓う。

 

これだけでもちょっとユニークな展開なんだけど、さらに小野の採用基準が「顔の左右の黄金比」なるもので判断していくという。顔が良いものの方が早く転職しがちとか、独自の観察から打ち出した基準をもとに人事を行う。誰にも気づかれないように実行している小野ではあるが、小野の人事採用は意外にも好評であったりする。

やがて会社は「東証二部落ち」。

 

 

石田さんの小説は実際の会社ではあり得ないことだと分かってはいるんだけど、シチュエーションが細かく描かれているので、思わずリアルにあるかも?と思わされてしまう。真面目にふざけている感じがなんともクセになるんです。

 

 

 

 

今回の主人公の小野にも惹かれるものがあったな。常に信念を持って挑んでいるようなね。会社に対して納得がいかなくて辞めていく者もいれば、こうして、挑んでいく者もいる。自分はどっちだろう~?と、思わず問いかけてしまう。

 

100ページちょっとですが、濃厚な人事部の世界が詰まっていました。現在就活中の方、採用する側の様子を覗いては?意外な一面に気づけるかも!?

 

さて、次作もまた職場ものの作品かな?石田さん、どんどんエンジンがかかってきている作家さんって感じがします。楽しみです。

石田夏穂プロフィール

1991年埼玉県生まれ。東京工業大学工学部卒。2021年「我が友、スミス」が第45回すばる文学賞佳作となりデビュー。同作は第166回芥川龍之介賞候補にもなる。他の著書に『ケチる貴方』がある。

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