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【レビュー・書評・あらすじ】君が手にするはずだった黄金について:小川哲

 

 

君が手にするはずだった黄金について:小川哲著の感想です。

☞読書ポイント 

小川さんご自身を主人公に見立てた!?ような作品。どこまでが創作か実話か。現代人のあるあるが数多く登場。占い師、詐欺師、作家、つまるところ何が違うのか?という部分にも注目して読んでみよう。

 

感想(ネタバレなし)

君が手にするはずだった黄金について

君が手にするはずだった黄金について

 

必ず読まなきゃと思っていて、なかなか読めなかった小川哲さんの作品。芥川賞を受賞されてから、益々色々なところで話題になっていたものだから結構焦っていましたが、ようやくと言った感じでやって来た一冊。初読みになります。

 

この本を小川作品の最初に選んだ理由は、新潮社の中瀬ゆかりさんのおすすめからです。(中瀬ゆかりのブックソムリエの記事)で話されていたのですが、

 

どのくらい創作として読むのか、本当として読むのか、編集者にも判断がつかない。小川さんもあえてそこを愉しんで欲しいと。

 

読んでみるとまさにそんな感じで、一体どの部分が創作なのだろう?ってくらい、実話を聴いている感じがした。登場人物のキャラも、彼らの話も本当にリアルです。居酒屋で隣席の話を盗み聞きしているような気になりました。

 

 

小説家の鏡」では、友達の彼女が占い師の言いなりなって、仕事を辞め、小説家になるということを決断。友達は主人公の「僕」に相談を持ち掛ける。そこで、その占い師を検証?対決?しに「僕」は占い師のもとへ出かけて行ったのだが.....。

(本文より)

噂通り「占い師」の考察はスゴイですね。占いは、当たるとか、当たらないとか、そのからくりが必ずあるはずだと思ってはいたけど、本作を読んでいると「なるほどなあ~」って。しかしやはり曖昧な部分も多く、「僕」も占い師に会ってやっつけることが出来たか?と言えば、そうでもない。

 

表題作の「君が手にするはずだった黄金について」では、ロレックスのデイトナを付けている羽振りの良い同級生が登場する。デイトナってそんなにスゴイ時計なの?ってくらい、これを付けることの圧倒的なステイタス感、周りの人の見る目が興味深い。やはり持ち物って一瞬で人物判断できちゃう材料なんですよねぇ。

 

占い師も詐欺師も作家も、つまるところ何が違うのか?という問いかけが残る。「人の振り見て我が振り直せ」ではないけれど、色々考察しているうちに、自分と他者の違いが曖昧になる感じにも注目です。

 

 

 

とにかくいろんな人々が登場する。現代人の「あるある」は小川氏に任せた!と言いたくなるほど。特に作者と年の近い読者は相当面白い作品なのでなはないかなと思う。

 

それにしても小川さんが高学歴であることは知っていたけど、頭の良い人ってこんな風に物事を捉えているのかと唸ることしばしば。また、ものすごく哲学的なことをおっしゃったりするので、こちらは頭をフル回転させていました。現代の「あるある」を含め、テンポよい読み心地、次は長編を読んでみたい!と思いました。

 

小川哲プロフィール

1986年千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程退学。2015年に『ユートロニカのこちら側』で第3回ハヤカワSFコンテスト〈大賞〉を受賞しデビュー。『ゲームの王国』(2017年)が第三八回日本SF大賞、第31回山本周五郎賞を受賞。『嘘と正典』(2019年)で第162回直木三十五賞候補となる。(Amazonより)

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