吉祥寺ドリーミン~てくてく散歩・おずおずコロナ~:山田詠美著のレビューです。
☞読書ポイント
【感想】終始楽しいエッセイだけど、言葉に対すことは容赦ない
おお!と、ちょっと背中がぞくぞくする怖い話から始まった。なになに?エイミーはエッセイの路線が変わったのか?なんて思ってしまったが、数ページ進んでいくと、通常モードのエイミー節。
考えてみたらデビューからだから、もう何十年も読み続けている山田さんの小説とエッセイ。いまでこそジェンダーを扱った小説は増えたけど、当時はそういった内容を書く作家自体が少なかった。いろいろ山田さんの小説からは世界を広めてもらったなぁ。
そしてエッセイは本当に毎回楽しくって飽きることが全くない。山田さんの若かりしころのちょっと破天荒な生活ぶりは、当時の自分にも心当たりがあるので理解できたし、現在の山田さんの穏やかな生活は、そうした時代を抜けて出来上がったものだいうことも。年相応に落ち着いていく感じ、これもまた、山田さんのエッセイを読むと頷ける部分なのだ。
そんなこんなでエイミーのエッセイは自分の足跡を振り返る時間にもなっている気がします。こんな風に読めるのもずっと書き続けてくれているからだよなぁとしみじみ。
さて、コロナでいろいろと思うことを書き綴るエッセイ。面白いですよ、古市さんや、モーニングショーの玉川さんなんかに牙をむくエイミー。そして、小池百合子都知事についても(笑)どれこれも「ごもっとも!」と、納得しちゃうほどエイミー節に魅せられる。特に「言葉の使い方」については容赦ない。
わたしが身を乗り出して共感しちゃったのが「おうち」。この言葉にイラって来る方は、是非本書をおススメします(笑)「おうち」については何回も登場する。そうなんですよ、「おうち」って大人が使うとぞわっとするのです。特に男性がね(男女世差別と言われようが)。そりゃ、子供に向けての会話ならOKですよ。けどねぇ、ニュースとか、ビジネスの場で大人の男性が使うと、「ええ~~?」ってなる。この違和感、自分もずっと感じていたものだから、エイミーがあちこちにしつこいくらい書いてくれたのでかなりすっきりしました(笑)あと、小池さんの横文字とかねぇ。「もういいよ」ってなっていたので膝を打ちっぱなしでした。
言葉は人によって感じ方も受け取り方もまちまちだけれども、そういう感覚が同じ人に出会うのはなんとなもうれしいものだ。山田さんの本を読んでいると、「言葉」を少しも蔑ろにしない姿勢にとても共感できるのだ。重くならないよう話口調で書いてはいるけれども、「言葉」を大事に扱っている様子が窺えるのである。
そのほか読んだ本の話なんかは、自分が読んだ本と被っていることもあり楽しめました。わたしはエイミーのサイン会には行ったことがないのですが、本当は会ってお礼をしたいくらいです(笑)ファンの方を大切されているようで、涙もろくなった山田さんご自身もいろいろ感じることが多いようです。
ということで、つらつら書きましたが今回も安定の面白さ。次に読むときは、コロナ後であってほしいなぁ~。
※山田さんと言ったり、エイミーと言ったり、ポンちゃんと言ったり、呼び方がコロコロ変わりますが、あえて統一せず、書いたままにしておきました。
【つなぐ本】本は本をつれて来る