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【感想・あらすじ・レビュー】天災ものがたり:門井慶喜

 

 

天災ものがたり:門井慶喜著のレビューです。

 

☞読書ポイント 

地震、津波、火事、飢饉、豪雪、火山の噴火、河川の氾濫、どれも私たちと無関係ではいられない問題。いま一度、天災の歴史を振り返り、「備える」ということの大切さを知ろう。

 

 

 

 

 

感想・あらすじ 

 

その名の通り、国内で起きた様々な天災を扱った短編集。これを読み終えた時、すぐに感じたのは、これらの物語はまだまだ続いている話であること。物語はすでに私たちの時代にバトンを渡し、そして私たちもまた次世代へとバトンを送ることになる。天災の物語は決して終わらないものだ。....という現実を突きつけられる。

 

本書は江戸から昭和にかけて国内で起きた、地震、津波、火事、飢饉、豪雪、火山の噴火、河川の氾濫等々の話が登場する。現在も私たちの生活を脅かすものだ。我々はこれらに加え、疫病も経験。そして、これからは地球温暖化で起きる未知の「異常な事態」を経験することになるだろう。なんだかすごい時代を生きていますよね。

 

「歴史は繰り返される」とはよく言ったもので、「自然界」もまた繰り返される。だから、それに備えればいいのだけど「喉元過ぎれば熱さを忘れる」という人間の愚かさもまた繰り返されることのひとつ。

本書で印象的だったのは「漁師」という小説。127年前に東北を襲った三陸沖地震の話なのですが、東日本大震災で津波の恐ろしさを知った私たちにとって、この話はかなり自分たちに引き寄せて読むことが出来る。

 

この地震で家も家族も失った一人の漁師が仲間たちと一緒に、津波被害で失われた町を高台に移し、家を建て、新たな生活をスタートさせるのだが、その生活は何をするにも不便。それゆえに、せっかく集まった人々も次々と高台から再び海の近くへ引っ越してゆく。

 

悩ましい問題ですよね。やはり外からの出入りが多いのは海の近く。そこを中心に町が栄えるのは自然なこと。100年単位の自然災害と日常の利便性を秤にかけた時、やはり人は日常の利便性を取るものだと感じさせられる。

 

 

 

 

 

現在はどうだろうと、以前訪れたことのある陸前高田の海岸線をGoogleマップで辿ってみたら、やはりだいぶ風景が変わっていた。浜の近くは店も民家がほとんどない。人々は高台の方で生活されているのか?それともこの場所からやむを得ず引っ越されたのか?分かりませんが、昔の人々と今を生きる私たちが経験したことを無駄にすることなく復興させなければならないということを再び感じました。

 

本書では他にも富士山火山の話も出て来る。今も富士山の噴火については色々耳にすることが多い。また、火事の話のように、街を呑み込むような大火事が起きた場合、「囚人」の対応はどうなるのだろう?この話のように、取り合えず逃がすのだろうか?等々、現在の刑務所関係の避難についても気になるところ。

 

「今までに経験したことがない」という言葉が当たり前になってきている昨今。雪とか雨とか、それに伴う洪水とか、昔よりむしろひどくなっている。今年の酷暑もその一つですよね。生きるだけでも厳しい時代に入ったことを改めて自覚せざるを得ない状況です。

 

ということで、この物語たちは今と地続きの話であり、これから私たちがさらに経験するであろう大災害に対しての警告でもあった。命を守ること、生きることの必死さをまざまざと見せつけられた一冊でもありました。

 

 

 

 

門井慶喜について

1971年群馬県生まれ。同志社大学文学部卒業。2003年、第42回オール讀物推理小説新人賞を「キッドナッパーズ」で受賞しデビュー。15年に『東京帝大叡古教授』が第153回直木賞候補、16年に『家康、江戸を建てる』が第155回直木賞候補となる。16年に『マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代』で第69回日本推理作家協会賞(評論その他の部門)、同年に咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞。18年に『銀河鉄道の父』で第158回直木賞を受賞。他の著書に『ロミオとジュリエットと三人の魔女』『自由は死せず』『東京、はじまる』などがある。(Amazonより)

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個人が出来る最低限のことはここからかな~。あとは、政府が税金をちゃんと災害の防止や復興のために使ってくれるよう祈るばかり。

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