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*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【レビュー】地中の星:門井慶喜

 

 

地中の星:門井慶喜著のレビューです。

 

地中の星

地中の星

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☞読書ポイント 

東京の地下鉄はいつ、如何にして作られたのか。今となっては当たり前の存在である地下鉄。そのはじまりには人々の大きな大きな努力と情熱があった。この本を読むと、今あるメトロ網の発展のすごさを改めて感じます。

 

なんとしても都内に地下鉄を作ろうと身を捧げた男がいた

 

今でこそ地下鉄は当然あるものとして存在しているが、考えてみればこれだけの地下鉄が都会の下で年中動いている状態ってすごいことなんですよね。そんな地下鉄にも、もちろん「最初」があったわけで、誰かが作らなければ存在しなかったもの。何にもない状態から地下鉄を作るなんて想像しただけでも途方に暮れる。

 

今でこそ地下を掘ることは日常になったけど、当時はやはり地下を掘る、ましてやそこに電車を通すなんてことは当然恐ろしいことだったということは想像できる。東京の地盤がいかほどのものなのか、誰も知らなかったわけだし、もし地面が崩壊したら大惨事になる。おまけに我が国は地震大国だ。

 

それでもなんとしても都内に地下鉄を作ろうと身を捧げた男がいた。それが本書の主人公・早川徳次だ。ヨーロッパ視察から戻った徳次は「東京にロンドンみたいな地下鉄を」という夢を持つ。その夢を叶えるべく様々な苦難を乗り越えていくのがこの物語なのだが、とにかく地道にコツコツとという印象が最初から最後まであった。何もないところから始めるって、こういうことなんですよね。

 

まず徳次が行ったことは、妻とともに銀座四丁目の交差点に立ち、市電を乗り降りする乗客数を数えることだった。ポケットの中に入れた豆を数えながらデータを収集。この行動を機に資金調達や各方面への説得などに奔走。やがて工事にまで辿り着く。

 

 

 

 

中盤からは現場の職人たちの具体的な作業状況や人間関係が生き生きと描かれる。工事のミスは許されない緊張感、しかしやはり事故は起きてしまう。それらを乗り越えながらも、まずは浅草ー上野間を開通させる。

 

後半はさらに地下鉄を広げることにより生じる問題を中心に話が展開する。東急の「強盗」と呼ばれた五島慶太と徳次、そして「官」との関係性が際立つ内容であった。これを読むと「新橋」と言う駅の存在が一段と感慨深いものになる。歴史を知るって新ためて大切だなぁと思う。

 

地下鉄には五島慶太以外にも大隈重信や渋沢栄一など大物の助力があったことも記されている。とにかく「資金、資金、また資金」。資金と理解がなければどうにならない世界。徳次がいかに資金集めに明け暮れたか、その努力も圧巻であった。

 

さてラストは?

五島慶太が徳次の自宅にやって来るシーンが印象的だ。ここは胸熱です。徳次の奥様もいいなぁ~~。

 

くわえて、現在の「営団」の生い立ちも解る。これはちょっと意外な展開だったなぁと思う。今に通じるいわゆる「力関係」をまざまざと見せつけられた気がしました。

 

銀座線は通勤で結構長い期間利用していましたが、こういう歴史あったのを知っていればもっとありがたみを感じながら乗れただろうに。あの時は、ホームが狭いだの、混んでいるだの不満も多かった。また、途中で電気が消える箇所があったりで、ちょっとだけレトロな気分が味わえたっけ。

 

渋谷の狭いホームも今は消え、渋谷の街も激変した。この景色を当時の人々はどのような気持ちで天国から眺めているのだろうか?わたしと同じように「変わっちやった」とちょっぴり嘆いているのだろうか。

 

上野ー浅草間、たった2.1キロしか走っていなかった地下鉄。これが後々どうなったか。説明すまでもなく、私たちの日常に欠かせない交通手段となり都内を駆け巡っている。読後にメトロの路線図を見た。色とりどりの線を眺めながら、ただただその数に驚くばかりだ。そして、地下鉄を作ってくれた人々に心より感謝の気持ち湧いた。だってね、駅直結のデパートとか、本当に便利なものまで考えてくれたんだもの。感謝しかありません(笑)

 

【つなぐ本】本は本をつれて来る

*こちらはちょっと長旅な鉄道のコメデイ

大阪と東京間が7時間半もかかっていた時の話。食堂車とか懐かしい~~!

獅子文六の古さを感じない小説は面白さ満載です。一度乗ったらもう降りられませんよ。

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