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【感想・あらすじ・レビュー】掌の読書会-柚木麻子と読む林芙美子:林芙美子

 

 

柚木麻子と読む林芙美子:林芙美子著のレビューです。

☞読書ポイント 

林芙美子自身があまり気に入っていない作品などをあえて選ぶ作家・柚木麻子さん。彼女と林芙美子の共通点は?などを考えながら読むのも面白い。未読の短編ばかり、あらためて林芙美子の作品の奥深さが感じられる。

 

 

感想・あらすじ 

私はこの「ふてぶてしさ」に何度も元気づけられてきた――。筋金入りの「おフミさん」ファンを自認する作家・柚木麻子が、数多く残された短編から一二編をセレクトし、語る。自分で稼ぎ、自分の足で歩く女たちの魅力あふれる短篇集。

 

林芙美子の短編集を柚木さんが編集されたものです。そういえば、先日NHKで柚木さんが林芙美子を語っていたなぁと思い調べたら、「100分de名著」という番組だったのですね。テキストもありました!

 

ということで、柚木さんが林芙美子ファンだったとは!女性たちが多く出て来るという意味で近いものを感じますが、なんとなく意外でしたねぇ。でも、今回のセレクトされた「市立女学校」なんぞは、女子たちのわちゃわちゃ感が柚木さんの作品を彷彿。そうか、そうか、二人にはどこか共通点があるぞと。

 

 

 

 

一編一編、柚木さんの解説などが入って来るのかな?と思ったのですが、そんなこともなく、あくまでも林芙美子の短編が中心。普通の短編集として集中して読める内容でありました。もちろん最初と「おわりに」で柚木さんは登場しますが、こちらも意外にもあっさりと。もう少し柚木さんの解説を読みたかったとい気持ちも無きにしも非ずでしたが、遠慮されたのかな。

 

全部で12編。各作品短編ですが、長いもの、短いもの、内容もバラエティに富んでいます。私的には合わない作品もちらほらあったのがやや意外。なんでも柚木さん、林芙美子があまり気に入っていなさそうな作品をあえてチョイスしたとのこと。実際、芙美子が自分でめちゃめちゃにけなしている作品も入っている。....ということで、柚木さん、面白い視点で選んだ作品たちなのですね。

 

林芙美子が描く作品は時代背景が色濃く出ているものが多い。戦争が近くにあった時代。女たちにはいかなる時でも恋愛にまつわるエトセトラがあり、生きるため必死の仕事があった。その姿は頼もしく、思わずエールを送りたくなる女性たちもたくさん登場した。

 

 

 

 

私的に心に残った作品は、「浮き沈み」。再会した男女の話。おいしそうな料理も登場し楽しめた。「」の大暴れも強烈だった。「フロベールの恋・蝉」では、「そんな別れ方は厭です」と、新宿の夜を泣きながら歩く若い女性に、何十年経っても思いを馳せる「私」に、女性同士だからこそのほんのりとした温かい気持ちを感じずにはいられない。短い話だけど、とても印象的でした。

 

ということで、読み応えのある短編集でした。必ず好きな作品が見つかるんじゃないかなと思います。意外にも芙美子の嫌いな作品がお気に入りになるかも!?

 

 

林芙美子プロフィール

一九〇三(明治三十六)年、福岡県門司市生まれ。幼少より両親とともに、行商の生活を重ねて九州一円を転々とし、後に広島県尾道市に落ち着く。高等女学校在学中から文才を示し、卒業後上京して多数の作品を発表する。三〇年手塚緑敏と結婚、同年『放浪記』がベストセラーとなる。日中戦争が勃発した三七年以降、女流の従軍作家として活躍した。終戦後、文学的生涯の頂点を迎え、『松葉牡丹』『浮雲』などの秀作を残した。五一(昭和二十六)年没。『泣虫小僧』『牡蠣』『うず潮』『巴里の日記』ほか著作多数。(Amazonより)

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