七つの季節に:斉藤洋著のレビューです。
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感想・あらすじ
あまりに昔のことで今となっては確かめようがない。あの時、本当に起きたことなのか?確認しておけばよかったかな~っていう体験のひとつやふたつ、誰にもあるのではないかと思う。幼い時の話だから気のせいだったかもね.....なんて片付けることもできちゃうのだけど、大人になってもことあるごとに思い出したりするものだから、やっぱり何かがあった....と個人的には考える。
本書はそんな今となっては確かめようのない不思議な話が七つ。どれも動物にまつわる話ということで興味を持ちました。大好きなペットとの別れの時に起こった不思議な話的なものを勝手に想像していたのですが、そういうのと違うテイストの話でした。やはり斉藤さんの作品は、不思議でちょっとだけ怖い。
例えば「アラビアハツカネズミ」。子どものころに行った縁日って必ず小さな動物が売られていましたよね。色のついたひよことか。わたしは怖くて素通りしちゃってたけど、当時の子供たちにかなり人気があり、みんな見入っていました。
このはなしにも珍しい金色のアラビアハツカネズミが登場する。主人公の男の子二人が縁日で魅了された他とは違うアラビアハツカネズミとは?。大人になって当時のことをふたりは振り返るのだが、ふたりの記憶は同じではなく....。しかし、今となっては確認のしようもなく話は終わる。
縁日、珍しい小動物、記憶、どれもなんかあやふやで消えてしまうもの。ノスタルジック満載な雰囲気が余計に不思議な気持ちにさせられる。いつまでもくすぶり続けている感じ、ん~なんか分かるなぁ。
「七福鳥」は「九官鳥」の特長を活かしたちょっとユーモラスを感じさせられる話。飼っていた九官鳥が逃げてしまう。ある日、見つけた人が親切に届けてくれたのだが......。
「ブレーメンの音楽隊」は、全体的にこれらは実話なのか?というほど妙にリアル。もしかしたら斉藤さんの体験談をもとに作られたのかな?とも思ったり。出てきたホテルはひょっとして本当にあるのではないかな...と。
ということで、あっという間に読了。斉藤さんの短編は面白くて一度本を開いたら止められなくて、結局一気読み。これから読む方は、読書時間を確保の上、一気に読むことをおすすめいたします。
斉藤洋プロフィール
亜細亜大学教授。1986年『ルドルフとイッパイアッテナ』で講談社児童文学新人賞受賞。1988年『ルドルフともだちひとりだち』(講談社)で野間児童文芸新人賞受賞。1991年「路傍の石」幼少年文学賞受賞(Amazonより)
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お祭り、不思議、と言えば恒川さんの「夜市」がまず浮かびます。子どもに戻ってまた縁日を再現したいなぁ....。