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うずまきぐ~るぐる 

*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【レビュー】BUTTER: 柚木麻子

 

 

BUTTER: 柚木麻子著のレビューです。

BUTTER

BUTTER

 

 

まさにこってりバターのような話ではあるけれど.....

 

やっと借りることのできた本書。2017年に出版されたのだから、すでに4に年が経過。常に頭の片隅にこの本があったのは確かで、手もとに届いた時は「やれやれ、ようやく来たな」という気持ちでした。

 

本書はあの有名な木嶋佳苗事件をモチーフに描かれた作品。柚木さんの作品はこってりした文章という印象があり、文字もみっちり詰まっていて、読むのにも時間を要するし、体力も要る。そこに来てこの濃厚なタイトル「BUTTER」。そして、「木嶋佳苗」。これはもう覚悟を持って挑まなければと、楽しみ半分、戦闘モード半分といった気分で読みはじめました。

 

前半は週刊誌の女性記者・里佳が、交際中だった男性3人の殺害の罪に問われ勾留されているカジマナこと梶井への取材を重ねる。里佳は殺された男性たちと同様、カジマナの言葉に魅了されてしまう。寝ても覚めても彼女の言ったことが気にかかり、自分も同じような行動を起こしていくと言う非常にゾワゾワする展開に釘付けになる。

 

カジマナが発する言葉には独特な魔力のようなものがある。相手の心を巧みに操ってしまうような気持ち悪さ。それらが非常に上手く描かれている。なんというか、変な占いや宗教にはまって行くというのはこんな感じなのかな?って思わされるようなものがあった。

 

面白く読んでいたのは、里佳と梶井のやり取り、及び里佳の親友が加わって梶井の実家に乗り込んで、さらに取材を進めて行くあたりまでだったように思う。

 

 

 

後半へ行くほど、里佳の周りの人々がぞろぞろと登場し、それらの人々の生活云々がごちゃごちゃ出て来たものだから、梶井の存在自体が徐々に薄まってしまい、結局、どこに話が向かうのかちょっとイライラしてしまった。

 

ということで、私的には話をコンパクトにすれば、もっと核心部分に触れることができたんじゃないかと残念な気持ちに。

 

結局のところ、カジマナの本当の気持ちはどこにあったのか?

里佳をはじめ外の世界の人々は、なんとなく新たな気持ちで歩き始めたようなラストだったけど、肝心の梶井だけがなかった人かのように存在がなくなり、尻切れトンボといった感じがなんとも。

 

獄中結婚後の様子ももっと盛り込んで欲しかったな。女の友情とか、恋人や夫婦の関係とか、結局のところそっちが主だったのか?と、なにかすっきりしない。

 

なにはともあれ、最後まで読み切った。いろんな意味で柚木さんの作品は自分にとって読むのに苦労する。決して読みにくいとかではないのだけど、どうも胃もたれるするような感じです。まさに「BATTER」がたっぷり入った料理のように....。