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【感想・あらすじ・レビュー】花に埋もれる:彩瀬まる

 

 

花に埋もれる:彩瀬まる著のレビューです。

☞読書ポイント 

彩瀬まるさんってどんな作品を書く人か?そこを知りたい方には持ってこい一冊。とにかく様々なバリエーションを愉しめる短編集です。世界的にも評価の高い作品を含め、次々現れる不思議な話に魅了される。

 

感想・あらすじ 

「確か、昔読んだことがある作家さんだよなぁ~」という頼りない記憶。しかし、本書を読んでいくと「やっぱり初読みだよな」と思い直した。―――というくらい、作風が変わったように感じられた彩瀬まるさん。作品のトーンは一緒なんだけど、こんなにも不思議な小説を書く方だった?と、自分のブログから彩瀬さんの名前を検索。ありました!「あのひとは蜘蛛を潰せない」。約10年前に読んだのですが、やはり当時の作風からは想像できないほど、本作は不思議モードが増し、やや自分の中で混乱。

 

さて、そのなんとも言えない世界が詰まった「花に埋もれる」は短編集です。6編のうちのひとつ「花に眩む」は、彩瀬さんのデビュー作とのこと。と、ここでまた立ち止まってしまう。

 

「花に眩む」は本作の中でも特に不気味な話なんですよね。身体から植物が生えるという。芽が出たり、引っこ抜いたり。ところどころ気持ちワルくなったりで...。そんな話と恋愛話...のようなものが溶け合い、ラストはえらく幻想的なものを感じたりと。

 

で、なんとこれが彩瀬さんのデビュー作っていうから、むしろこっち路線が彩瀬さんの書きたい世界なのかも~と、新たな発見をしました。(個人的には本作の「なめらかなくぼみ」あたりが彩瀬さんの作品のイメージでしたが....)

 

 

 

 

身体から何かが....的な話で印象的だったのは「ふるえる」。これも何とも言えない気分に陥る作品。人を好きになると「石」が自分の体に生まれるって話。それを取り出してみたり、ちょっとグロテスクさを感じながらも、純粋に人を想う気持ちや切なさと、「ええ?」という驚きとの間を行ったり来たり。とにかく奇想天外な発想に読者も「ふるえる」のだ。この作品は世界的にも評価されているそう。なんとなく理解できます。

 

ラジオでは、デビュー作から最新作までのベストアルバム的な一冊と紹介されていた。確かにバラエティーに富んだ内容で、私的には未読だった10年間を埋める作品集でもありました。新潮社の中瀬さんがおっしゃっていた、「いくら説明しても『なんの話?』って思われる」。これには大きく頷ける。そのくらい言葉で表現しにくい世界を彩瀬さんは見事に描いているんだと思います。

 

デビュー作「花に眩む」と、最新の「ふるえる」。こうして2冊を比較してみると、彩瀬さんの根底にある一貫性を見ることが出来る。読み比べてみると、そのあたりの発見も楽しめるので、巻末の作品一覧の年月日までチェックすることもお忘れなく。

2023年4月にラジオで紹介されました。

matome.readingkbird.com

 

 

 

彩瀬まるプロフィール

1986年千葉県生まれ。上智大学文学部卒。2010年「花に眩む」で第9回「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞。2013年に小説としての初の単行本『あのひとは蜘蛛を潰せない』を上梓。2017年『くちなし』で直木賞候補、2018年同作で第5回高校生直木賞受賞。2021年『新しい星』で直木賞候補。その他の著書に『骨を彩る』『桜の下で待っている』『やがて海へと届く』『朝が来るまでそばにいる』『草原のサーカス』『かんむり』など。2023年には『花に埋もれる』所収の短編「ふるえる」がイギリスの老舗文芸誌「GRANTA」に掲載、『森があふれる』の英語版が出版されるなど海外でも高い評価を受ける。また小説以外の著書に東日本大震災の被災記『暗い夜、星を数えて――3・11被災鉄道からの脱出――』がある。(新潮社・著者プロフィールより)

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こちらも体に出来たものの不思議な話が登場。読み心地がなんとなく彩瀬まるさんの作品に通ずるようなものを感じましたよ。

www.readingkbird.com

試し読み

「ふるえる」が全文公開されています。(太っ腹すぎ!!)