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【レビュー】戦争とバスタオル:安田浩一・金井真紀

 

 

戦争とバスタオル:安田浩一・金井真紀著のレビューです。

戦争とバスタオル:安田浩一・金井真紀著のレビューです。

 

 

☞読書ポイント 

本書の面白いところは、同じ場所に行って、同じ人々に会って、実際どう感じたか、二人の視点から語られるということ。また、各自がその時の互いの様子を観察する感じも面白い。各地の温泉や銭湯の歴史と、戦争体験者の話は必読。記録としても貴重な話ばかりです。

 

感想

「戦争はまだ終わっとらん」

 

見た目結構分厚い本ですが、読み始めるとあっという間でした。ということで「戦争とバスタオル」。タイトルに惹かれて手にした一冊。各国の温泉や銭湯に安田さんと金井さんが一緒に訪れ、それぞれの視点でレポートをする。

 

てっきり温泉旅的なものかなぁーと思っていたのですが、章を重ねるごとに、戦争関連の話の占める割合が上がっていくような感じ。もう何というか、戦争って本当に広範囲にわたって人々を傷つけ苦しめてきたものだ、いや、今でも苦しめているものだということを再認識させられました。また、本書で知ったこともたくさんあった。今まで聞いたことがあった戦争の話は、まだまだほんの一部でしかないということも痛感。

 

 

今回おふたりがが取材に訪れた場所は、タイ、沖縄、韓国、寒川、大久野島。どの話も必ず地元の方や、戦争体験者の話が絡んでくる。(カラーイラストや写真も使用されているので、暗い雰囲気はない)

 

沖縄にたったひとつ残る銭湯「中乃湯」の話はどこかほっこりするムードが漂っている。番台ではなく外のベンチで店番をするシゲさん。やってくる常連客と茶菓子を食べながら...あーいいなぁ、いつまでも残って欲しいなぁと願わずにはいられない銭湯。しかし、歴史の中に埋もれることなく、中乃湯を守り続けたシゲさんの人生もまた感慨深いものあった。

 

韓国の話はもちろん戦争の話や、日本人妻・芙蓉会のおばあさんたち、彼女たちを見守り続けた人達の生の話は、両国の歴史を知る上で貴重なものだった。

 

それと同時に、垢すり文化の歴史なども興味深かった。また、韓国人と日本人の銭湯に対する考え方の違いなど「ほう、ほう」と頷ける考察も。目に焼き付いたのは「自動アカスリ機」なるものの存在。使う人の姿もかなり滑稽だと想像。斬新な機械です。

 

あと、韓国の銭湯でのバスタオルの男女格差。女性はバスタオルは持ち帰ってしまうから、入り口で2枚しか配られない。対して男性は手ぶらで来るので盗むことはないと。中に入ってから何枚でも使い放題。これにムッとする金井さんの気持ちに共感。そんなことがあるんですねぇ。

 

 

そして旅は、日本の寒川と大久野島へと。ここでは温泉や銭湯の話は控えめで、毒ガスを日本で製造していたという話が中心になる。体験者の話は、かなり貴重で重たいものだ。知らなかったとはいえ、自分が加害者であったことには変わらない、という気持ちをずっと持ち続けて来たひとりの男性の話は、一読しておくべき証言。日本人としても知っておかなければならない話なのです。あららためて日本は被害者でもあり加害者でもあったことを突き付けられました。

 

本書の面白いところは、同じ場所に行って、同じ人に会って、実際どう感じたか、二人の目線から語られること。非常に面白い試みでもある。確かに銭湯は男湯・女湯と分かれているわけだから、男女で取材するのは画期的だとも言える。お互いの取材スタイルなどもたまに語られたりするのも面白い。

 

にしても、このタイトル。バスタオル問題は最後まで引っかかるよねぇー金井さん!と、共感の意味を込めて、肩をトントンと叩きたくなった。

 

りすさんからのnext本

温泉をはしごしたことはありますか?この小説は別府温泉が舞台。マラソンをするように温泉をはしごするんだけど、優勝した者は願いがなんでも叶う?!というご褒美が。えぇー!?

 

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