うずまきぐ~るぐる 

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あんずの木の下で:小手鞠るい

 

 あんずの木の下で:小手鞠るい著のレビューです。

 

(本が好き!の献本書評です)

 

◆こういう疎開をした子供たちもいたのか。

   知ること、残すことの大切さをあらためて感じました。

 

 

満洲へ渡った子供、上野の浮浪児と呼ばれた子供、沖縄の小さな島の子供、それぞれの疎開先に向かった子供。これらはここ数年で読んだ戦争に関する本に登場した日本の子供たちだ。振り返ってみると実に色々な場所で戦争体験をした子供たちがいたということが分かる。

しかし、自分の中で思いつかなかった子供たちがいた。それは、肢体不自由な子供たちだ。献本募集の内容説明ではっとさせられた。そうだよ、彼らはその時どう過ごしてたのだろうか?安全な場所に居られたのだろうか?身体が思うように動かないという状況下で迫りくる戦争の音を感じることは、さぞ怖かっただろうに。

国は真っ先に彼らを疎開させるだろう.....当然のように考えたことはあっさり裏切られる。戦争一色のこの国にそんな余裕はなく「戦力にならない」「障害があるから」という理不尽な理由から学童疎開をさせてもらえなかったというなんともやるせないことが事実としてあったのだ。

そこで立ち上がった人物がいた。
光明学校の生徒たちは、校長の強い意志によってこの「現地疎開」を実施することになった。これは生徒たちを集めて教師と共に生活をするというスタイルで、いつ空襲が起きても先生が生徒たちを守れるという疎開だ。防空壕も用意された。

やがて東京も危険が迫って来た。そこでまたしても校長が動き、必死な働きかけにより、長野県上山田温泉へと本格的な疎開が決まる。どこにも頼れないという状況下、子供たちの命を守ろうという強い気持ちのみで動いていた校長の姿が印象的だ。そしてそれを受け入れた上山田ホテルの経営者も素晴らしい。

疎開先では学習のみならず治療という課題もこなさなければならなかった生徒たちの一日。地元の心優しい人々、美しい自然に囲まれた生活をするうちに最初は家族と離れて不安や寂しさでいっぱいだった生徒たちも徐々にそんな気持ちが小さくなっていった。

しかし実際いじめもあった。また、戦争が終わってもなかなか東京に戻れず、日本一長い疎開にもなってしまった。彼らにとって辛いことも数多くあった疎開ではあったけれども、命が守られたことが何よりも大きい。

またひとつ違った角度から当時の子供たちの生活を知ることが出来ました。戦争は遠い過去になり、こういう話を知る人、語れる人もこれからどんどん減っていきます。私たち世代でもまだまだ知らないことばかり、若い世代はなおさらでしょう。このように本として残すことは年追うごとにどんどん大事なことになってゆくのだなぁと強く感じました。

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