ゆりの木荘の子どもたち :富安陽子著のレビューです。
こちらの作品は2021年の青少年読書感想文コンクールの中学年課題図書です。
感想:あれれ?一体、何が起こったの?
もし自分がこの先おばあさんになって、ある日突然こんな経験ができたらきっと面白いだろうな~って思えた物語でした。
ゆりの木荘は100年以上前に建てられた洋館。今は老人ホームとして使われており、6人の老人たちが一緒に暮らしています。
物語は森野さんと佐倉さんがゆりの木荘のテラスの隅のベンチで、小さな裏庭を眺めながらおしゃべりしている場面から始まります。
「ねぇ、いまの、聞こえた?」
サクラさんのこの言葉から、物語は一気に77年前に戻ります。
そう、タイムスリップです。
子供に戻ったのは二人だけではなく、なんと、ここで暮らす老人たちも子供に戻ってしまいました。一体何がおこったのでしょう?
そこには深いわけが。
それは77年前、サクラさんとある女の子との約束したことに関係があるようです。
その約束とは?そして、その女の子の正体とは?
タイムスリップしたのは、戦争があった時代なので悲しい部分もある。ネタバレを避けるため詳しいことは書けませんが、全体的にはドキドキするようなファンタジーで、ちょっとした謎解きもあります。出てくる女の子の正体は、今でも話題になる子です。そのあたりも含めて楽しい展開でした。
また、登場人物の個性が際立つ会話にクスリと笑わされ、ちょっとしたユーモラスも交え最後まで楽しく読めました。
富安陽子プロフィール
1959年東京都に生まれる。児童文学作家。 『クヌギ林のザワザワ荘』で日本児童文学者協会賞新人賞、小学館文学賞受賞、『小さなスズナ姫』シリーズで新美南吉児童文学賞を受賞、『空へつづく神話』でサンケイ児童出版文化賞受賞、『やまんば山のモッコたち』でIBBYオナーリスト2002文学賞に、『盆まねき』で野間児童文芸賞を受賞。「ムジナ探偵局」シリーズ(童心社)、「シノダ!」シリーズ(偕成社)、「内科・オバケ科 ホオズキ医院」シリーズ(ポプラ社)、「やまんばあさん」シリーズ「妖怪一家 九十九さん」シリーズ(理論社)、YA作品に『ふたつの月の物語』など、著作は多い。(絵本ナビより)