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【レビュー・あらすじ・感想】うつくしが丘の不幸の家:町田そのこ

 

 

 うつくしが丘の不幸の家:町田そのこ著のレビューです。

☞読書ポイント 

引っ越し先の先住民はどんな人たちだったのか?噂を簡単に信じてしまってよいのか?ちょっとだけ視点を変えてものごとを捉えてみると、また違ったものが見えて来る。人の言葉に左右されず、自分自身を信じることの大切さを知る人間ドラマ。
うつくしが丘の不幸の家

うつくしが丘の不幸の家

 

 

感想:あらすじ:『不幸の家』って呼ばれているのを知っていて買われたの?」なんて言われても....

 

わーん、不覚にも最後のページで泣かされた!このラスト、ズルいなぁ...

でも、やっぱり小説はこういう気持ちにさせてくれるものが望ましい。

 

タイトルに「不幸の家」なんてあるから、どんなに恐ろしいことが起きるのかと身構えてましたが、話自体は恐いというより「人生いろいろ」みたいな人々の苦悩を描いたもの。人々の抱えている問題はどこにでもありそうなものだけど、一人一人に焦点を当てて行くと、それらは本当に息苦しく、ひたひたとその痛みが伝わって来る。

 

そんな人々を見守る存在は家。美しが丘という新興住宅地に建つ築25年の一軒家。この中古の家を改装して美容室にした夫婦ふたり。物語はこの夫婦の新生活からスタートする。やっとこさ開店に漕ぎつけそうになったある日、通りがかりの女性に「ここが『不幸の家』って呼ばれているのを知っていて買われたの?」と妻は言われてしまう。

 

うわうわ、これ最悪なパターンですよね。

この家の裏庭に枇杷の木が植わっているからなのか。なんでも枇杷の木はウソかホントか、嫌な迷信があるという。気持ちが沈んだ妻は枇杷の木を切ってしまおうとする。しかし、お隣の老婆の話を聞いたことにより、なんとか妻は落ち着きを取り戻した。

 

 

 

ここからは先住民の話を遡って行く。誰もが幸せを望んではいるけれども、気づけばつまずき、悩み、時にそれは長い間心の中に渦巻いていたりする。それでも人とつながることによって気づけたり、新しい気持ちになれたりと。再び歩き出すためのきっかけも人それぞれ。

 

「見る角度とか自分の心持ちとか、こんなことで?って笑えちゃうような些細な理由だったりするの」

 

隣の老婆が言った一言ですが、一生乗り越えられないと思っていた問題だって、ある時急にぱっと解決することがある。枇杷の木の迷信も、通りがかりの女性が放った言葉もまさにそれなんだな。

 

本作は短編と言う形で進んでいくのですが、人々が微妙に繋がって行く感じがとても自然でうまい。いろんな形で繋がっていた感じが心地よい。

 

町田さんは「女による女のためのR‐18文学賞」を受賞されている。この文学賞に選ばれる作家さんたちと相性が良いわたし。うんうん、この賞らしい作風だなぁと納得。新刊の「52ヘルツのクジラたち」で、現在乗りに乗り注目を浴びている町田さん。これからますます注目されるであろう作家の一人。楽しみです。

町田そのこプロフィール

1980年生まれ、福岡県在住。2016年「カメルーンの青い魚」で第十五回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。2017年、同作を含む短篇集『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』でデビュー。『52ヘルツのクジラたち』で2021年本屋大賞を受賞。他の著書に『ぎょらん』『星を掬う』『宙ごはん』「コンビニ兄弟」シリーズがある。(新潮社著者プロフィールより)

文庫

 

 

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