猫のお化けは怖くない:武田花著のレビューです。
いつでも変わらず居てくれる武田花さんのエッセイと写真
ほんと、久しぶりの武田花さんのエッセイと写真。
嗚呼、帰って来た。なーんか、ほっとする。
さびれた雰囲気の写真に癒される。色のない風景画に旅情をかきたてられる。
どんなに読んでも疲れないのは何故?
そういえば花さんの写真には、動物は出て来るけれども、人間は出て来ない。
風景は出て来るけど、そこがどこなのかはさっぱり分からない。
今の世の中、どこにいても人はいるし、スマホを持っていればどこに居たって情報やら、雑音が入ってい来る。
でも、この本からはそういったものから切り離された雰囲気があるからなのか、なんの疲れも感じない。
短いエッセイはどれも面白い。ハラハラするもの、不思議なもの、くくくっと、笑いたくなるもの。いろんなはなしが静かにやって来る。時にちょっと靄がかかっているかのような、現実?それとも夢?みたいなものもあった。
それと、愛猫・くもの存在。一緒に旅するくもと花さん。猫もあんな風に一緒に旅することが出来るのかぁとちょっと驚いた。そして、大好きなくもに翻弄させられる花さん。
そんな相棒であったくもはあの世に逝ってしまった。
どんなにくものことを可愛がっていたか、そしてどんなに会いたいか、文章の隙間から滲み出る。そんな思いがお化けでもいいから・・・なんだろう。
それにしても花さん、怖がりのくせに風邪で寝込んだときは、怖い本を蒲団の中で読んで、ますます熱に浮かされるのが快感だと言う。昔からそうしていたそうで、入院した時も、病室での不安な夜にぴったりの読書だと。こういうところがちょっと変わっていて面白い。
もう何冊も花さんのエッセイを読んで来た。わたしも花さんも、同じように年を取っているはずなのに、花さんはいつまで経っても変わらず同じトーンで現れる。もちろん、だいたいの年齢も分かっていはいるんだけれども、本を読むと花さんは年齢不詳の人になる。そして、登場する場所もずっと変わらずそこにあるようなところばかり。
そうか、花さんの本は「時のない本」なのかもしれない。
また「時が止まったところ」が恋しくなったら、花さんの本を読もう。