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うずまきぐ~るぐる 

読書書評ブログへようこそ!読んだ本についてのあれこれを思いのままにぐるぐるかきます。

【レビュー】嬉しい街かど:武田花

 

嬉しい街かど:武田花著のレビューです。

嬉しい街かど

嬉しい街かど

  • 発売日: 1997/07/01
  • メディア: 単行本
 

 

密とは無縁の旅さんぽ

 

そろそろだな。花さんの本のなかの寂れた街を散歩したくなりました。

ここ数年、花さんの本は一定期間をもって読んでいます。それほどたくさん出版されているわけではないので、一気に追いかけるのはもったいない!とチビチビと。このテンポもなんとなく本の雰囲気に合っていると言うか、とにかく花さんの本と自分との距離感が今はとても心地よいと感じています。

 

「あとがき」を入れても79ページ。とても薄い本なんですけど、しっかり花さんの世界が詰まっている。

 

地名は知っているけれども、なかなか足が向かないなあと思う場所が花さんの旅先。例えば木場の材木置き場とか、羽生とか、足尾鉱山とか、入船や日立港等々...。これらの場所の更に奥の奥の場所って感じのところで、寂れた風景にシャッターを切る花さん。しかも写真はモノクロ。もうこれだけで十分旅情がある。そこにえらく魅かれているわたし。

 

でもね、たまにギョッとさせられる風景に出合う。例えばエッセイに「柔らかな砂の上に、かっちんかっちんに固くなった鳥の死骸。カモメだろうか。」という一文があった。なんとなく情景は浮かぶ。

 

 

 

次のページをめくると思わず「ひっ」と声をあげそうになった。そうなんです、「かっちんかっちん」が浜辺に横たわっている。いやー、花さん、驚かさないでーー!容赦ないんだから。

 

動物はわりと頻繁に登場する。しかし、相変わらず人の姿はない。けれども、街の人々の声は聞こえて来る。クスリと笑えたり、ちょっと不思議だったりする会話が文章から伝わって来る。

 

愛猫の「くも」も登場し、こちらまで嬉しくなる。猫なのに一緒に散歩しているくもちゃん、ほんとうに微笑ましい。

 

 読んでいる間は周りの音が遮断され、本のなかに入り込める。本を閉じる時には、旅の終わりの寂しさを感じさせられる。色のない世界からこっちに戻って来たような...そんな気持ちにさせてくれる花さんの本。また時期が来たらこの世界に埋もれたい。