御社のチャラ男:絲山秋子著のレビューです。
あなたの近くにもきっといるチャラ男
面白そう、なんて興味をそそられるタイトルなんでしょう。
会社勤めしている方ならパッと思い浮かぶ顔が一人や二人居るのではないでしょうか?そんな気になる「ツボ」を絲山さん、しっかり抑えているいるなぁー。
帯によると、
チャラ男って本当にどこにでもいるんです。
一定の確率で必ず。
むふふ。確かにねぇ。でもチャラ男の基準ってどんなだろう?説明しろって言われると曖昧で複雑、なかなか一言では答えられないなぁ。仮面をかぶって、あえてチャラくしている人も居そうだし。ホストと会社のチャラ男とではなにか違う気がするし。
話の舞台は地方都市。とある食品メーカーには、営業統括部長の三芳という男がいる。そう、彼が今回の「チャラ男」と呼ばれている人物なのです。社長にヘッドハンティングされ入社したという三芳。
この小説の面白さは、彼の会社に勤めている人々をはじめ、彼に関わるあらゆる人々の視点から「三芳」という人物を語って行く。その数15人。
一人の人間を、様々な人々の目で追って行くので、徐々に三芳の人柄が明確になっていくような面白さがある。年齢や性別によっても見え方が違う。そして、三芳本人も登場する章もある。ここでは三芳が逆にこの会社の社員を考察。
本書は三芳を追って行くと同時に、社員の証言内容から、彼らの価値観やら生き方やら、将来の野望など、なにか人々の裡にあるものが見え隠れする。また、この会社のブラックな部分なども判り、会社生活のリアルも描かれている。
全体的に感じたのは、面白い試みだなぁーって思いました。タイトルからは、三芳の話に絞られるのかな?って思っていましたが、気づけばそれだけではなく、徐々に三芳の濃度は薄まって、他の人々の状況なども上手い塩梅に描かれている小説でもありました。
ちょっと変わった風味の小説。こういうのもありですが、人が変わるたびにプツプツ途切れてしまう感じのテンポに乗るのことが意外にも大変だった。
でも、とても面白い試みの小説であったことは確かです。
あなたの近くにいるチャラ男は、うざい?それとも愛すべき存在?
そんなことを考えながら読了。