鎌倉の家:甘糟りり子著のレビューです。
感想 鎌倉と甘糟りり子、そして家族
甘糟りり子さんの小説は、「エストロゲン 」しか読んでいませんが、現代女性たちの姿をリアルに描く作家さんだなーと感じている。
「鎌倉の家」というタイトルから「あら?今度はちょっと古風な内容かしら?」と思っていたら、こちらはエッセイ。しかも、甘糟さんのご実家は鎌倉の日本家屋というではないですか。羨ましいなぁ~と、まんまと釣られるように本を手に取りました。
稲村ガ崎近辺にある甘糟家。マガジンハウスの元副社長の父親と、文筆業と料理家の母親の間が移り住んだ鎌倉の住まいは、客間には囲炉裏があり、庭には四季の花々が咲く古民家だ。
そこでのびのびと育ったりり子さん。サーフィンをしたり、夜遊びしたりと、いわゆるバブルを謳歌した世代で、私にも心当たりがある弾けっぷり。読んでいるとこそばゆいものが。
ご両親の職業柄、この鎌倉の家にやってくる錚々たる著名人は、やはり一般家庭とはひと味違う。中でも向田邦子さんの名前が出て来た時には「すごっ」と思わす身を乗り出してしまった。
お料理、器、おもてなし。母親のしてきたことを自然に学びながら、いつしか自分も身につける。失敗しながらもそういったものを大切にしているりり子さんに好感が持てました。
家族とのかけがえのない思い出話はもちろん、家族と通った鎌倉界隈のお店の話などからは、地元ならではの鎌倉の移り変わりが感じられ、ちょっと切ないいい話になっている。甘糟さんはこの先も魅力的な鎌倉の家を大事にしながら、鎌倉の町で暮らしていくのでしょうね。
小説とのギャップが意外にも大きかった甘糟さんの生活。
海の香り、緑豊かな環境。鎌倉いいな~。古民家いいな~。美味しいお店、骨董屋さん、羨ましいな~。....と、鎌倉界隈の風景を思い起こしながら読み耽りました。