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【レビュー】夢も見ずに眠った。:絲山秋子

夢も見ずに眠った。:絲山秋子著のレビューです。

夢も見ずに眠った。

夢も見ずに眠った。

 

 

 

 でこぼこ道を共に手を携えて歩くこともあれば、一人で歩いた方がうんと楽な時もある

 

内容は結構シビアでだったけれども、数多くの場所が登場するせいか、読み終わると登場人物とともに旅をして来たという余韻があった。

 

夫婦の話は熊谷、岡山、倉敷、滋賀、盛岡、遠野、函館、青梅、奥多摩、下北沢、横浜、松江等々、まだまだたくさんの地名が登場します。「あ、この場所でこんなことがあったな」って思い出すような些細なことってあると思うのですが、この小説はそういう話を繋ぎ合わせて行く。

 

 

 

夫婦のすれ違いの始まりってどこからはじまるのだろう?この小説はギクシャクとした夫婦・高之と沙和子の12年間を描いたもの。婿養子、妻の単身赴任、夫の鬱、どこか気づまりを感じる夫婦に歯がゆい思いを募らせながらも、不思議とこの二人に嫌悪感がなかった。

 

静かにふたりの間にある何かがすり減ってゆく。やがて噛み合わなくなる。この話では夫が鬱病になったことが大きな引き金になり別れに向かう。その微妙な「すり減り」を描くのはとても難しいものだったはずですが、絲山さんはそのあたりを実に巧みに柔らかくじんわりと綴っている。それが逆にものすごく現実的なものに映った。

 

様々場所を描くことによって「人生も旅」なんだなということを感じさせられた。でこぼこ道を共に手を携えて歩くこともあれば、一人で歩いた方がうんと楽な時もある。そんなことを感じながら長い旅はこれからも続く。

 

いつまでも胸に留めたいラストの爽快感。まるで長いトンネルから抜け出したような余韻を残す。読後感の良さは満点でした。

 

それにしても夫婦のすれ違いを描いた小説なのに、こんなにもあちこち行きたくなるようなものは珍しい。登場する場所もとても魅力的に描かれている。