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【レビュー】場所:瀬戸内寂聴

 

 

場所:瀬戸内寂聴著のレビューです。

場所 (新潮文庫)

場所 (新潮文庫)

  • 作者:瀬戸内 寂聴
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2004/07/28
  • メディア: 文庫
 

 

80歳になって寂聴さんはどう過去を振り返る?

 

あちらにいる鬼:井上荒野 -を読んで、再度、寂聴さんのこれまでを振り返りたくなり再読。本棚の奥の奥に眠っていた10年以上前に購入したと思われる本書を引っ張り出し、読み始めたら止まらず。昔読んだ時と比べ、今回はより深く心に浸透していくような読み心地があった。たぶん、昔はサクッと読んでいたに違いない。

 

「場所」は寂聴さんの過去の出来事と、その時居た場所を絡めて綴られた1冊。80歳になり、思い出の地を再訪し、自分の過去を振り返る。

 

その内容は父の故郷、母の故郷まで遡り、その後、結婚、離婚、作家デビュー、出家など、長い道のりを丁寧に綴って行く。場所に纏わるエピソードの数々は、時代背景も色濃く反映され、当時その場所がどのような様子であったのかも分かり、興味深いものがあった。

 

 

 

そして、何と言っても寂聴さんと男性たちの恋愛模様は、何度読んでもジリジリと焼けるような熱量を持って私たちの心を焦がして行くような迫力がある。寂聴さんと言えば、なんとなく恋多き女性と言ったイメージがある。しかし、関係があった男性は言うほど多くはない。その関わり方があまりにも濃厚なゆえ、そういったイメージがあるのだろう。

 

わたしはこの長い話で男女の不思議な関係を目にしたわけだが、とにかく本書で一番印象的だったのは「眉山」で始まった恋のはなしです。

 

何をするでもなく、見つめ合うだけの数分の逢瀬を重ねる男女の恋。狂おしいほど相手を想い徐々に夢遊病者のように情熱の塊になって行く姿。そしてペダルを漕いで会いに行く迫力。この章は、人が恋に落ちるということの一心不乱さんがつぶさに描かれていて、そのエネルギーに圧倒されるのだった。

 

たぶん幾つになっても人を好きになる寂聴さんの原点はここにあり、ずっと心に持ち続けている風景であるのだろうなぁと感じます。文字で読んでいるだけの私までもが苦しくなるほど、恋の痛みと喜びが伝わってくるのでした。

 

複雑な人間模様から、切っても切れない縁とか、女心とか、なかなかハードな内容ではあったけれども、これも全部終わったこと。でも温めておきたい思い出というものは何年経っても色褪せずその人の心に留まっているものだと改めて思う。

 

再読して良かったなぁと思う。三鷹市下連雀は私が生まれた場所でもある。あの場所の空気感は今でもずっと自分の中にある。寂聴さんが、太宰が、かつて同じ場所で過ごしていたのかと思うとなんだが鳥肌が立つような嬉しさを感じずにはいられない。