営繕かるかや怪異譚その弐: 小野不由美著のレビューです。
見える、聞こえる、臭う、感じる。怖いのなかで何が一番怖い?
「営繕かるかや怪異譚」はシリーズだったのですね。そうとは知らずに、気を抜いていたら「その弐」が出版されていました。前巻と表紙の雰囲気が似ていたので気づきませんでした(笑)
さてさて、相変わらず怖いです。小野作品は・・・。
この本を読みながら、「怖い」ってなんだろう?って、ぐるぐる考えてました。聞こえるもの、目に見えるもの、匂いがするもの、気配があるもの。怖いにもいろいろな種類があるわけで、どれが一番怖いかなぁーと。やっぱり見えちゃうのが最強かな~~。
6編の短編です。なかでも私が一番怖いなと感じたのは「魂やどりて」。
今、古民家や古道具など、再利用も兼ねたものが流行っていますよね。古ものは当然ですが、誰かが使っていたもので、その家や物がどんな風に扱わていたのか、分からないまま引き継がれることがほとんどだ。
主人公の女性は古い家に引っ越してきて、自分の好きなようにリノベーション。古道具屋で買ったもに手を加えたりしながら部屋作りに励んでいた。彼女はある箪笥を購入する。しかし、欲しいのは箪笥の抽斗のみ。抽斗をひっくり返して、土間に上がる踏み台にしたのです。昔の家具ゆえしっかりしていて問題はなさそうだった。
しかし、その家具は「唐木仏壇」だったということが後々判明する。漆も箔も使わず木をそのまま使った仏壇だという。そうとは知らず抽斗だけ引っこ抜いて、しかも踏み台にしてしまったのだから、そりゃ、何が起こっても・・・ってやつです。
こういう過ちってあり得ますよね。本来何に使うものか知らずに別利用してしまうことって。それに加えて、昔の家や道具は人の思いなども残っていてもおかしくない。引き継いで大事に使う事自体は悪くないけれども、使い方を一歩間違えると・・・ってことをちょっと考えさせられた話でもありました。
さて、そんな数々の住居にまつわる怪異や障りを、営繕屋・尾端が修繕し、解決へと導く。どの話も、サッと現れて、サッと解決してゆく。登場時間は短め、忘れたころにやって来ると言った感じで、今回は存在が少々薄めに感じました。修繕そのものよりむしろ、今回は怪異の話を厚めにされたのかな。
見えたり、聞こえたり、臭ったり、気配がしたり・・・。
最後の「まさくに」を読むころには、やはりいろんなところに「いる」ものなのかもしれないな、という気持ちへと向かった。