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【レビュー】大原御幸:林真理子

 

 

大原御幸:林真理子著のレビューです。

大原御幸 帯に生きた家族の物語 (講談社文庫)

大原御幸 帯に生きた家族の物語 (講談社文庫)

  • 作者:林 真理子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/11/14
  • メディア: 文庫
 

 

「うちの父は、ほんまに立派な人やった」。溺愛する娘への、お金の使い方に注目!

 

帯に興味があり、その歴史や製造過程などを期待して手に取った一冊。ですが、本のタイトルにもある通り、本書はその家族の物語、もっと言えば父と娘の物語と言ってもいいかな。

 

京言葉で綴られる物語なので、最初はそのちょっとねっちりした感じが馴染めず、どうなることやらと思ったけれども、慣れてしまえばこっちのもの。あとは、スルスルと読めてしまう感じでした。

 

戦後の京都。着物の黄金時代と言われていた時期に、考案が飛ぶように売れたという天才帯屋である松谷鏡水。

 

本書はこの男の生涯を、74歳になった娘が、フリーライターに語るというかたちで辿って行く。「うちの父は、ほんまに立派な人やった」と、父親を褒めたたえる娘。その娘をどれだけ溺愛していたかという父親の姿が濃厚に描かれている。特に娘のリサイタルに関しての父親のお金の使い方はまったくため息ものである。

 

 

 

当時の大原でのゴージャスな暮らしぶりや、政治家や作家、俳優など著名人との交流の広さなども興味深い。寂聴さんや有吉佐和子さんなど実名で登場。

 

娘は離婚して野球選手と再婚。父はよく遊ぶ方で、お妾さんが何人もいるという人物。娘もそのお妾さんと暮らしたりと、普通では考えられないような当時のお金持ち家庭ならではの異世界な感じがすごい。読んでいる分には面白いんですけどね(笑)

 

この話にはどうやらモデルとなる人物がいたようです。若松華瑤という天才図案家とのこと。画像検索をすると、その作品が見られます。

 

というわけで、最後まで読んでみると、いかにも林さんが書きたくなるのが理解できる人物でであります。私は結局、この家族に釘付けでした。若松華瑤が作り上げたと言われる「百種類の能装束」「行司装束」は見てみたいなぁと思いました。