残穢:小野不由美著のレビューです。
ドキュメンタリーを見ているようなホラー
めちゃくちゃ怖いものを想像していたのですが、なんと言うか、ひとつのドキュメンタリーを見ているようなそんなホラー小説でした。
ホラー小説と書いたけど、それすらもちょっと違う気がするほど、実際にあったことを
読んだって感じが今もしています。
作中には作家の平山夢明さんの名前なんかも出てくるので、「あれ?これ実話なの?」と何度思ったことか…。
いわゆる「家」にとりつく得体の知れないものを取り上げてそれが何であるのか、今まで住んでいた人々や出来事を次々に調べてゆく形で話が進みます。
その部屋で何かあったのか?とか、その土地は昔…的なものを想像していたのですが、読んでいくうちにそんな単純なものではないことが判る。
「残穢」というタイトルの意味が初めはよくわからなかったのですが、読み進めていくうちにその意味が、その輪郭がくっきり判っていくような不気味さがあった。
怨みを伴う『死』は穢れとなる。
穢れは怪異となり伝染し、拡大する。
これが一番怖い。
どうやっても防ぎようがない。知らないうちに自分が感染していろんなものを連れて来ちゃう可能性はあるんだものね。
畳を擦る音が聞こえる。
いるはずのない赤ん坊の泣き声がする。
何かが床下を這い回る気配がする。
こんな現象を発端に、主人公が地元のみならず、全国へ出向き、大勢の人々の証言から探ろうと試みる。
長い年月をかけてのインタビュー。途中で止めることも出来たはずなのに、まるで降りられないゲームのように次々と証言者が現れる。
取材に関わった人々に起きる身体の不調など、偶然か何なのか気になることがあれこれ見え隠れし、最後までこの不気味さを読者も共有する。
とにかく時代を遡ってその土地に関わった人々がわんさか出てくるので、「えっと、この人は誰だっけ…」という感じでそのたびに冷静になってしまった。
なので、どーっぷり怖さにハマることはなかった。ただ言えることは「実際にありそうだ」ということと、やっぱり判らないなぁ…という途方に暮れる感。
人の居つかない賃貸物件も確かにあるだろうし、お店がしょっちゅう変わる場所もあるだろう。決して何かがあったわけじゃないのに、そうなる原因は一体何なんだろう。それは単なる偶然なのだろうか?…と、ついつい考えてしまう。
さて、この本。結構読んだなぁーと思って次に読もうと手に取るとこれが意外にもページが進んでいない。
読んでも読んでもページが増えているような…。
そんな不気味な錯覚がちょっと怖かった(笑)