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【レビュー・あらすじ・感想】異類婚姻譚 :本谷有希子

 

 

異類婚姻譚 :本谷有希子著のレビューです。

異類婚姻譚

異類婚姻譚

 

 

感想

じわじわと、じわじわと・・・夫婦関係の歪みが現れる

 

(早く借りられる「群像」にて、本作品を読みました)

 

毎度、芥川賞受賞作品と相性が悪い私でありましたが、今回はそんなことも感じず、一気に読んでしまいました。いやぁ・・・なんだろう。この読後感。ラストはホラーなの?この発想には唸ってしまった。

 

つまるところ、夫婦って似て来てしまうということか。
いつしか一体化してしまうものなのか。
それとも、いつの間にか入れ替わってしまうものなのか。
いや、もともと違う世界から来た別の生きものなのか。

なんてことを、ぐるぐる考える。

 

─────ある日、自分の顔が旦那と

      そっくりになってることに気が付いた

 

 

 

 

結婚4年目の主婦サンちゃんとだらしのない夫。夫は家ではいつもゴロゴロしていて「家では何も考えたくない」、「1日に3時間はテレビを観たい」と言う。くだらない番組を一緒に観ようと強要するお子ちゃまのような人なのだ。

 

この夫、決して悪い人じゃないんだろうけど、なんだか無性にイラつくというか。そんな夫と似てきてしまったということに気づいたサンちゃんの世界は少しずつ歪みはじめる。

ご近所付き合いの話を絡めつつ、やがて話は思わぬ方向へ動き出す。夫は大量の揚げものづくりに熱中し、それを食べ続けるサンちゃん。

 

いつの間にか夫婦の輪郭が混じりあって…。

 

読んでいる時は決して怖さは感じない。しかし、水面下では少しずつ、少しずつなにかが浸食していたのだなぁということがラストへ来て放出される。そこにゾワゾワっとするものが。

 

「異類婚姻譚」とは、人間と違った種類の存在と人間とが結婚する説話の総称。ということらしい。

 

結婚とはある意味違う種類のものと一緒になるってことなんだろうけど、それでも似て来たり、入れ替わったり・・・。不思議なもんですよね。

 

 

 

 

松谷みよ子さんの「モモちゃんシリーズ」もそうだったけれど、夫婦間で起こる違和感って、日常生活にどんどん浸食してゆき、やがてファンタジーなものにさえなり得るというか・・・・。表面上は普通にしていても、いろんなものが見えて来たり、歪んで見えたり、心の中に溜まってゆくものが、なんらかの形を変えて現れる。

 

このちょっと病的とも言える現象が静かに怖い。表現しがたい小説でありましたけど、なかなか飽きさせない面白さがあったと思います。この奇妙な感じ、嫌いじゃないです。