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【書評・あらすじ・レビュー】日没 :桐野夏生

 

 

日没 :桐野夏生著のレビューです。

日没

日没

  • 作者:桐野 夏生
  • 発売日: 2020/09/30
  • メディア: 単行本
 

 

感想・あらすじ やっと辿り着いたラスト、しかしそこでもまた.....

 

(ネタバレなし)

読み終えたところで、あまりに救われない気持ちがして、昨年記事にした「王様のブランチ」の桐野さんへのインタビューを読み直した。そうか、この物語は「敗北の物語」でもあったのか。改めてラストシーンが頭のなかをよぎった。

 

最初から最後までずっと重たい雰囲気、本を開くのが憂鬱になるくらい闇深い内容であった「日没」。このダークさはまさに桐野さんの作品、一段一段、確実に私たち読者に絶望という場所へいざなう展開で、終始息苦しさを感じます。

 

物語は「文化文芸倫理向上委員会」と名乗る政府組織から、小説家・マッツ夢井のもとに届いたの一通の召喚状からはじまる。小説について訊ねたいことがあるという名目で、マッツはこの組織に出頭することになる。「社会に適応した小説」を書けと命ぜられたマッツは、更生するためにここで療養することになる。

 

 

 

療養とは名ばかり、ここでの生活はまるで刑務所のようなもので、外との通信はもちろん、ここに居る人々との私語も許されず、食べるものも粗末なものしか与えられないという劣悪な環境。やがて、監禁、入居者の自殺など、どんどん重苦しい雰囲気に。読めば読むほど「絶望」という色が濃くなってゆく。

 

マッツも最初は色々抵抗していた。そして、いつかここから逃げ出せるという希望をもっていた。しかし雲行きは怪しくなるばかり。後半はどうなるかと固唾を呑んで行方を見守っていた。さぁ、どっち。どうなるの??と。

 

インタビューで桐野さんはラストについてこう語る。

 

私も最後まで迷っていて、校了の最後の終わる寸前まで書き直していた、最後の15行くらい書き足したんです。

 

まさに、このラスト15行がこの物語の怖いところ。そして、桐野さんがこの話をどう終わらせようかと迷った形跡がはっきりと解かる。

 

自由に何でも書いていいというわけではなくなってきているかなって感じることがある。

 

小説家だからこそ日々感じていたことを、こういった形で表現した桐野さん。何かに屈して書くことや、一部だけを切り取って間違った捉え方をされることなど世間に文字で発信していくことの難しさが感じられました。

 

「日没」はこれらのことがまるで悲鳴のように表現された一冊であるように思えました。桐野さんからの警鐘は、いつまでも闇の中から鳴り響いている。

 

 

日没

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