満月ケチャップライス:朱川湊人著のレビューです。
感想・あらすじ
ふしぎな存在、チキさんとはじまる生活
「チキさんといると……
何だか心の中の花が咲くみたいな気がするんだ、私」
こんな気持ちにさせられる人物チキさん。
ある朝台所に行くと、知らない男の人が体育座りで眠っている。
夜の仕事をしている母親がどうも連れて帰ってきたらしい。
チキさんとの出会いは中学生の子供にはちょっと衝撃的とでも言おうか。
もし私だったら大騒ぎをしちゃうところだが、中学一年生の進也はいたって冷静に黙々と朝の準備をはじめる。そして目玉焼きを作り始めると、その男がアドバイスをしてくる。そんなちょっと変わった朝のシーンからこの話は始まります。
モヒカン、超能力者、麻薬、カルト教団、幾層にも重なったチキさんの過去。
怪しかったり、マズイ人物ではないかと勘繰る反面、
チキさんと過ごす日々は幸福に満ちている。
進也も妹の亜由美もいつしかチキさんのことが好きになり、やがて家族の一員のように思えて来る。特にチキさんが作ってくれる料理はどれも美味しい。
さて、穏やかな日々はこの先もつづくのだろうか?
チキさんの正体は?
「タオルと卵は、いつも新しいものをね」
幸せな家というのはいつもきれいなタオルと新しい卵があると言うチキさんの口癖。あ~なんかいいな、このフレーズ!なにげない些細なことなんだけど、案外大事ですもんね。
そして、満月ケチャップライスは幸福の味。
特別なことはないけど、チキさんの残す数々の言葉がほんのりと残るような優しい一冊でした。