バレエシューズ:ノエル・ストレトフィールド著のレビューです。
◆三姉妹の未来に幸あれ!
なんて可愛らしい問いかけで終わる物語なのでしょう。姉妹たちの突然の質問にしばらくの間、物語の中の出来事をあれこれ振り返る。お茶目な姉妹が目を輝かせながら、わたしの答えを今か今かと待っている気がしている。このレビューを書き終わる頃には答えが出せるかしら?
フォシル三姉妹。実は「フォシル」という姓は姉妹が勝手に自分たちにつけたもの。なぜなら彼女たちは元々姉妹ではなく、ある学者に赤ちゃんの時に引き取られた子たちだったのです。彼女たちは姉妹になり、祖先など関係なく自分たちで自分たちの名を歴史に残そうと健気に誓い合うのです。
学者はその後、航海に出たきり行方不明になってしまい姉妹はその姪のシルヴィアやメイドたちと共に生活をするも、家計はどんどん厳しくなっていく現実。生活のためにシルヴィアは家の一部を人に貸し出しなんとかやりくりしています。
姉妹たちは演劇アカデミーでダンスや演技を学びます。各々の才能を生かしそれぞれの分野に力を入れて学ぶ中、少女たちは様々な経験を重ねていきます。自分にとって何が得意で何が苦手か、他者と比べることによって見えてくるものは大きい。特に自分の方が優れていると勘違いし天狗になった者への大人の厳しい指導は、彼女たちが成長していく上で大事な役割を果たしています。
とにかく本書に登場する大人たちがとても魅力的な人たちばかりだ。
懐が深く、思慮深く、子供たちの気持ちを察する繊細な配慮の出来る大人たちに何度も感動させられるのです。少女たちの成長をわくわくした気持ちで読み進められたのも、脇役であった大人たちの存在がとても大きかったことに気づかされる。
毎度つくづく思うのですが子供の世界を描いた物語で素敵だなぁと感じさせられるものには、必ず素敵な大人たちの存在がある。「あぁ、こんな風に子供の気持ちを察し、こんな風な言葉でおしえてあげることができるのか」と、いつも感心してしまう。
本書に登場する大人たちも厳しさと優しさの匙加減が絶妙です。特に下宿人のシンプソンさんとペトロ―ヴァの温かい交流が印象的でした。
と、なんだか大人たちの話になってしまいましたが、この物語はもちろん少女たちが主役です。幼いながらに働いてお給料をもらい、少しでも家計の足しになるよう努力する姿、夢を追いかけて花開く日を目指していく姿、時に自分を見失いながらも、3姉妹が力を合わせて乗り越えていく様子を見ながら読者も明日を夢見る気分にさせられるのです。大人の本とはまたひと味違う充足感。物語の世界に包まれる感じを十分感じられた素敵な一冊でした。
さて、それぞれの道を見つけ羽ばたいていく姉妹たちの姿見送りながら、彼女たちの最後の問いかけをまだ考えているわたしがいる。ん~~やっぱり、答えは出せないままです(笑)