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*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【レビュー】すきまのおともだちたち :江國香織

 

 

すきまのおともだちたち :江國香織

すきまのおともだちたち (集英社文庫)

すきまのおともだちたち (集英社文庫)

 

 

いつか迷い込むかもしれない・・貴女だけのすきまの世界へ

 

不思議な話はあまたありますが、江國さんの「不思議」は、チャーミングな不思議とでも言おうか。

 

今回もその代表として、お皿が運転しちゃったりするんです。風呂敷も喋るし、ネズミの靴屋があったりと、「夜中のおもちゃ箱」っぽい不思議さを描くのが本当に楽しい作家さんです。

 

─────新聞記者の私は仕事で訪れた街で突如道に迷ったかと思ったら、
    そこは「すきまの世界」だった。

 

そこで出会ったのが9歳のちょっと高飛車でおませな女の子。
庭で育てたレモンの木からレモネードを作り、針仕事で暮らしているという。

 

彼女の家に泊めてもらうことになるのだが、そこには両親はいない。
彼女は古くて誇り高いお皿とふたり暮らしをしているのです。
もちろんお皿はちゃんと話せます。

 

 

 

そんな変わった生活をしている女の子のうちは居心地もよく、何日も過ごすことになる私。

 

うちに帰らない私を恋人は心配しているだろうと思いながらも、時間はするすると流れて行く。

 

さてこの話、ただ単に不思議な世界を描いて終わりではありません。
主人公の彼女が現実の世界で結婚しても、孫娘が生まれても、ちょっとした瞬間からこの「すきまの世界」に落ちてしまうというネバーエンディングな話でもあります。

 

けど、どんなに時間が経っても女の子はずっと女の子のまま。
このあたりの時間経過のアンバランスさもミステリアスで意表を突かれます。

 

よく子供だけに見える世界とか物語にありますが、こちらは大人になっても続くところがちょっと変わっています。

 

また、こみね ゆらさんの挿し絵から想像ができないほど、女の子の言葉は大人を唸らせるパンチがあります。(口調は雪子ちゃん調なのだけどね)

 

ある日突然すきまの世界へ迷い込んでしまう・・・
もしかしたらそれは自らどこかに逃避行したいサインなのかもしれない。

 

大人になればなるほど、日常とは違う、それでいてずっと変わらない場所に安らぎを求めに出かけてみたくなる。

 

「すきまの世界」に迷い込むことは、
生きるうえである意味必要な空間と時間なのじゃないかとふと思う。