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【レビュー】ホテルカクタス:江國香織

 

ホテルカクタス:江國香織著のレビューです。

ホテルカクタス (集英社文庫)

ホテルカクタス (集英社文庫)

  • 作者:江國 香織
  • 発売日: 2004/06/17
  • メディア: 文庫
 

 

 ずっと彼らの生活を覗いていたかった。ホテルカクタスはちょっと不思議な空間。

 

 

またまた積みっぱなしだった本に着手!少しだけ読んでそのままになっていたのですが、今回はすぐにのめり込み、一気読みでした。今、自分はこんな感じの本が読みたかったのだなぁーと。読書って本当にその時の気分によって乗れるものと、乗れないものがあるなぁ....と改めて思いました。

 

なにせね、今回の登場人物は、帽子、きゅうり、数字の2という御三方。「え?何それ?」って感じですよね。でも、彼らはちゃんと私たちと同じように生活しているし、田舎には家族もいるんです。

 

彼らが住んでいるのは「ホテルカクタス」という古い石造りのアパート。古き良きアパート、とてもいい雰囲気です。アパートの様子は挿絵がたっぷり入っているので、住人のように私たちもそこに居る気分になれるのです。

 

しかし、どの挿絵にも彼らの姿は登場しません。ひたすら気配のみを感じながら読み進めます。

 

それぞれの個性をもって、いくつもの日常の話が出てきます。最初はちょっと険悪なムードだったけれども、付き合いが深まり、絆が生まれていく感じがちょっと良い。

 

 

 

疲れて帰って来た時に話せる人がいる。眠れない夜に付き合ってくれるくれる人が居る。一緒に飲んで、歌って、騒げる人が居る。そして、旅を共にする人が居る。

 

このアパートの生活、小さな不満はあっても、他人と一緒にいる心地良さや、互いの存在の大切さを教えてくれる。いろんなシーンに出会うたびに、人が人を求めることの根底にあるものを感じずにはいられませんでした。

 

全てがわかり合えるわけでは決してない。けれどもこのアパートで過ごした時間から得たものは彼らにとって大きなものになっていった。

 

ホテルカクタスでの時間がいつまでも続くといいな。そんな心地よさを感じながら物語のなかにいたのだけれども、永遠にというわけにはやはりいかない。彼らの行方へ何処へ?

 

シリアスな話も、きゅうりとか帽子などの話ってなると、なんとなく微笑ましい雰囲気なるから不思議です。これらの話はなんら人間の世界と変わらないのにねぇ。頭の中で彼らの姿を想像するだけで気持ちが和らぎました。

 

童話のような世界があり、いつまでもこの場所から離れたくないなぁという気持ちが強く残った。江國さんならではのどこでもない場所を描いた作品。ほんと、日常を忘れさせてくれるトリップ感がたまりません!楽しい一冊でした。