狛犬の佐助 迷子の巻 :伊藤遊著のレビューです。
次のチャンスは100歳!?
神社にいる狛犬もきつねも、ちょっと背筋が伸びると言うか、
今でもその前を通る時、少しだけ緊張が走る。
でもこの本を読んだらすっかりそんなものは消え去り、
実際「佐助」みたいなお茶目な狛犬がどこかに居ないかな~と、
探してしまいそうです。
狛犬が主人公ってすごくないですか?
動かない存在をどう小説にするのか…設定自体がすでに面白いです。
─────明野神社の狛犬には、彫った石工の魂が宿っていた。
狛犬の「あ」には親方、「うん」には弟子の佐助の魂が。─────
この2頭の狛犬は師弟関係なんです。対面で鎮座しているのですが、
その会話がとても面白いのです。弟子の佐助の振る舞いに
終始文句を言う親方。
とても性格が優しい佐助は、この神社にたびたび訪れる青年のことが
気になって仕方がない。
この青年は飼い犬が逃げてしまい、どうにか見つからないかと
お参りにたびたび訪れます。そして、必ず佐助に声をかけてくれるのです。
もちろん、この青年には佐助の声は届きません。
神社は子供の遊び場でもあります。そこへあるちびっ子が登場。
彼の活躍ぶりは日を追うごとに分ってきます。
何がって、彼には佐助の声が聞こえ、会話が出来るから。
この話では、狛犬と話が出来るのは数え年7歳になる前の子供か
100歳を越えた者だけだという。
佐助はある会話を聞いたことがきっかけで、青年の犬の
居場所らしき情報を知る。しかし、伝える術がない。
そこで、このちびっ子になんとか伝えようと必死になる。
さて、ちびっ子、佐助の言ったことを、あの青年に伝えられるのか?
そして、青年は犬と対面できるのか?
…と、山場はこれだけではありません。佐助と親方の熱い関係も後半部
なかなかの展開を見せます。ランナーのように駆ける親方、格好いいです。
子供は子供らしくヤンチャな一面を見せてくれるが、素直な顔も見せる。
おばあさんのおっとりさ、青年の心に染みいる優しさ、
そして狛犬たちの個性豊かでユーモラスで人情味溢れる雰囲気。
この話はどこを切り取っても、あったかい雰囲気が気持ちよいのです。
ん~佐助みたいな狛犬と出会って話してみたいなぁ。
7歳は遠い昔、次回のチャンスは100歳越えかぁ…。
──狛犬と話す──
「100歳まで生きたらやりたいことリスト」に入れておこう。