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【レビュー】帰命寺横丁の夏:柏葉幸子

 

 

帰命寺横丁の夏 帰命寺横丁の夏:柏葉幸子著のレビューです。

帰命寺横丁の夏

帰命寺横丁の夏

 

 

祈ると生き返ることができる「帰命寺様」

 

 

小学校5年性のカズは、ある日突然自分の家から外へ出ていく白い着物の女の子を目撃します。

 

翌日学校へ行くと、その少女にそっくりの子が居る。カズにとってその子は今まで見かけなかった子なのだが、同級生たちは「昔からいるクラスメイトじゃなか」と言う。

 

自分だけが何故この少女の存在に気付かなかったのか?
しかも、昨晩うちで見た幽霊?にそっくり。この少女は一体…。

 

自分の住んでいるあたりは、かつて「帰命寺横町」であったことを知るカズ。夏休みの「自由研究」という名目で、あれこれ調べ始めると、次々色々なことが判って来る。そして、少女のことも分かりはじめると、今度はこの少女を守ろうという気持ちになり頑張りをみせます。

 

本書はこの謎の少女、そして土地にまつわる話、少年・少女の夏休みの様子だけではなく、「デイジー」という雑誌の連載小説「月は左にある」という物語が登場します。

 

本を見ると分かるのですが、この「物語」の部分はグレーのページになっていて、全体の3分の1がこの話で構成されているのですが、この物語が本当に面白く、本筋の話を思わず忘れてしまうほど。けど、この物語もちゃんと本筋と繋がっているのです。

 

 

 

夏休みは短い。カズにとって一日一日が大切であり、そして、なによりも守らなければならない存在が居る。

 

まっすぐにひたむきに突き進むカズ。
冒頭部の「幽霊が怖い」と言っていた姿はそこにはなく、とても頼もしく成長している姿がなんだかまぶしいくらい。

 

さて…別れの時は夏の終わりとともに訪れる。
登場人物も読者も次のステージに進めるような余韻がある終わり方で非常に清々しいです。

 

文句なく素晴らしい作品でした。
特に途中で入った「月は左にある」は、カズや少女が夢中になったように私も時間を忘れて読んでしまったほど雰囲気ある物語。

 

和の雰囲気、洋の雰囲気、1冊のなかにふたつが存在し、別次元の世界を味わえる独特な構成が新鮮で充実感がありました。

 

ということで、柏葉さんの作品良いですね。物語の醍醐味を思い存分教えてくれる作家さんだと思います。