消える人たち―九つの不思議な話:斉藤洋著のレビューです。
☞読書ポイント
「幽霊」の存在を肯定も否定もしないと言うけれど....
怖い本はよく読むほうだ。なんで怖がりのくせに読みたくなるか?は、自分でも解らない。しかも、今まで読んだものよりもっと怖いものを読みたいって思うものだから読み続けちゃうんですよね。それもこれも怖い本って結構奥が深くて、怖さの種類も本当にいろいろあるんですよね。たいていは「怖がらせてやろう」という作者の意図がある作品だ。読者としては、作り話と思えば「怖さ」も結構乗り越えられるけれども、やはり答えの出ない実話系は心底怖い。
本書もそんな種類の怖い本。図書館のリサイクルコーナーでタイトルのみで気軽にいただいてきた。「斉藤洋さんだし、子どもも読む本だからね、そこまで怖くないだろう」って。こういう感じの時が、意外にも危険だということをのちに思い知る。
斉藤さんご自身は「幽霊」の存在を肯定も否定もしないという、あくまでもニュートラルな姿勢でいることをプロローグでわたしたちは知らされる。斉藤さんにとってこれらは「不思議な体験」という位置づけで、たぶん気のせい、気の迷いとだと。
気のせい程度ならきっとふわっとした話なのだろうと気を抜いていた。しかし、しかしである。どの話もわたしにはゾクゾクするものばかり。
中央線の人身事故の話は真剣に怖い。斉藤さんご自身の怖い体験だけにとどまらず、それから2年後という時間を経て再び恐怖体験をするという。これってもう偶然じゃないでしょう?って言いたくなる話なのです。この話を読んだあたりから、「これは気軽に読む類の怖い本じゃない」と思い始める。
表題の「消える人たち」も駅の話だけど、これも訳の分からない怖さがあった。また、斉藤さんといとこが体験した「夜の訪問者」は、少し長めの話で、まるで小説を読んでいるような心地。こちらも理解不能な不思議な話だった。
最後に登場する「先生の入院」。これは不思議なんだけど、先生と教え子のとても良い話でほろりと泣き笑いさせられる。
ということで、いろんなバリエーショで不思議かつ怖い内容でした。途中からどんどん怖さを求める自分に拍車がかかり、結局一気読みに。自分が読みたかった怖い本って、こういう感じのものだと再確認。
リサイクル本という受け身な出会いの一冊だったけど、いい具合に自分にフィットした感じで読了。斉藤さんのこの手の体験本は他にもあるのかな。いずれにしろ油断大敵です(笑)
【つなぐ本】本は本をつれて来る
こちらも体験を綴った本。とにかくものすごい数の話が出て来てます。ネコだけでもバリエーション豊か。読み応えありです!