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【感想・あらすじ・レビュー】団地のふたり:藤野千夜

 

 

団地のふたり:藤野千夜著のレビューです。

 

☞読書ポイント 

こんな生活は案外理想的かも?と思わされる、幼馴染ふたりの女性を描いた日常。大きな出来事は起こらないけど、ささやかな日々がなんだか愛おしくなるような小さな幸せが詰まっている一冊。

 

 

感想・あらすじ 

 

なんてささやかな日常小説なのでしょう。過激な登場人物もいないし、びっくりするような出来事も起こらない。だから退屈な物語なのかと思うでしょうが、この「ささやか」な中に、実は面白さがギュッと詰まっているものだから、どんどん読めてしまう。読み始めたら止まらず、個人差はあると思いますが、結局2時間弱くらいで読了。疲れ知らずで一気読みできてしまう爽快感は、なんだか久しぶりだったなぁ。

 

ということで、タイトル、装丁からしてのんびりした雰囲気が伝わってきませんか?わたしこの装丁のふたりの女性、ずっと阿佐ヶ谷姉妹に置き換えていました。ちなみに彼女たちもこんな本を出しています!この表紙がどこか頭の中にあったからかなぁ。なーんかダブルんです(笑)

 

本作のふたりは古い団地住まい。団地の敷地内にある保育園からの幼馴染で共に50歳を迎える。ふたりとも一度はこの団地を出たものの、再び実家に戻って来たのだ。なっっちゃんは売れないイラストレーターで、フリマアプリで不要なものを売りながら生計を立てている。自宅の物だけでなく、ご近所さんの物も頼まれて出品。

 

ノエチは非常勤講師の仕事をしていて日々ストレスも多いが、家に帰る前になっちゃんの家に寄って愚痴ったり、一緒に食事やテレビを見たりして日々を過ごしている。

 

 

 

 

というなんてことない生活なんだけど、いいんですよねぇ~この穏やかな生活が。おいしいお野菜を取り寄せたり、たまに美味しいケーキを買ってきたり、そして、あれこれ言いながら「断捨離」の番組を一緒に見たり。休日には近所の釣り堀に行ったりして、小さな幸せがほのぼのと伝わって来る。

 

古い団地ということで住んでいる人は高齢者が多い。なのでちょっとしたことを頼まれることも。例えば網戸の張り替え。断れなくてやったらそれが口コミで広まり、他の人からも依頼され...お礼にピザをごちそうになったとか、ご近所付き合いが少々大変な部分もあるけれど、いわゆる「昔のよしみ」でお手伝い。人情味ある話も微笑ましいです。

 

ふたりにはかつて同じ団地内にもう一人の幼馴染「空ちゃん」が居た。たまにその彼女のことが登場するのだけど、そのあたりの話はホロリとさせられる。

 

ふたりは大人ですからもちろん過去のことを含め、年相応の悩みはある。それに、団地の老朽化もあり立ち退きなどの現実問題も迫る。将来の心配事が全くないとは言えないけれども、ある意味老後の予行演習とも言える生活。このままの生活を維持しつつ老後に移行していく感じが無理なく理想的な流れなのかもしれないと感じました。

 

そして何といっても自分のことをよく解っている女友達が近くにいるっていう安心感は最強だなぁと。たまに喧嘩もするけどね。でも家族同様、すぐ元に戻れるような関係はやはり理想的。あと、日々の小さな売り上げも微笑ましい。

 

とにかく派手さもなく平凡な日常を綴ったものなのに、意外にもガッツリ惹かれるものが詰まっていた。ささやかな幸せってきっと日常に溢れているんだよね。欲を言ったらキリがない。あれこれ欲張らないことも大事ということも感じました。

 

 

 

 

 

 

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藤野千夜プロフィール

1962年福岡県生まれ。千葉大学教育学部卒。95年「午後の時間割」で第14回海燕新人文学賞、98年『おしゃべり怪談』で第20回野間文芸新人賞、2000年『夏の約束』で第122回芥川賞を受賞。その他の著書に『ルート225』『中等部超能力戦争』『D菩薩峠漫研夏合宿』『編集ども集まれ! 』『じい散歩』などがある。(Amazonより)

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