彼方の悪魔:小池真理子著のレビューです。
ペストと誘拐。一見、なんの繋がりもないものが.....
図書館のリサイクル本で積んだままになっていました。なんと昭和62年の作品、ずいぶんとまた古い作品ですが、小池さんの作品は初期も面白い、特にホラーとか不気味なミステリーは静かに心に残すものが多いと思う。
本作も大変な内容になっていました。なにせ、ペスト菌の恐怖と、ストーカーがセットになっている話なんです。もうこれだけでお腹いっぱいってなりませんか?
話は留学生がアメリカから帰国するところからはじまる。彼はペットであったリスと一緒に帰ってくるのですが、そのリスはすでに死んでいる。可愛がっていたペット、せめて日本の自分の家の庭に埋めてやりたいと見つからないようにこっそりその死骸を持ち帰ってしまったのである。
ペスト菌はこうして国内に侵入してくる。話はもうひとつ。人気女性キャスターに歪んだ愛情を抱く男がした誘拐事件の話が並行して展開されてゆく。
この男、アメリカでホモに襲われたショックから精神的に病んでしまい、汚された自分の身体を清めるために、セントポーリアという花を神格化し、人間の女に形を変えたセントポーリアの花と交合しようとしているのだ。犠牲となったキャスターの女性は男に監禁され、絶望の中ににるのだが・・・。
肉体が蝕む、精神が蝕む。この小説は常に何かが迫って来る恐怖、そして一分でも早くこの状態から抜け出したいという焦燥感があったように思えます。ホラーではないけれども、不気味な空気が充満していました。
ペストと誘拐。一見、なんの繋がりもないものが、あれよあれよと話が繋がっていくあたり、小池さんの腕の見せどころといった感じです。感染症を扱った医療ミステリーをずっと前に小説化していたところもスゴイです。
コロナがなかったら、恐らく半分くらいしか怖さを感じなかったかもしれません。今だからこそ、ペスト菌の怖さを身を持って感じられたんだと思うと、積んでおいた本にも意味があったのかも?など、都合よく考えたりもしました。昔の小説だけど、とても旬な一冊となってしまいました。




