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*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【レビュー】雪割草:横溝正史

 

 

雪割草:横溝正史著のレビューです。

 

推理小説じゃない横溝正史!

 

レトロでわちゃわちゃした人間関係ものを探していたら、なぜか横溝正史に行き着いたという珍しい展開(笑)横溝正史といえば推理小説だけど、戦時下、時局にそぐわないという理由で探偵小説は忌避され、注文が途絶えていたときにこのような作品を書いたという。そんなことを「解説」で知ったのだけど、家族大河系の小説も全く違和感がない。とても新聞連載小説らしい作品だ。やはり横溝正史氏のすご腕を感じずにはいられません。

 

ということで、内容的にも希望通りのゴタゴタ度が高かく、けど、ちゃんと収まるところに収まるといった言わば予定通りの展開に満足、満足。

 

舞台は長野県上諏訪。私生児である主人公の緒方有爲子は、そのことが理由で地元の金持ち息子との縁談が白紙になってしまうところから話が始まる。養父はそのショックで急死、有爲子は実の父親を探しに東京へと向かいます。

 

わずかな情報を頼りに父親探しに挑むわけだが、そう簡単には見つかるわけもなく。でもそこはドタバタ劇にはありがちの、「偶然」とか「縁」という魔法の力で、小さな望みは決して絶えることなく物語は展開していく。

 

困っている有爲子に悪さを企む者、助けの手を差し出す者、昔からの信用できる人々、育ててくれた家族の様々な思い。そして有爲子もお年頃。伴侶を見つけ結婚もします。しかし、その結婚も....。これらの人生イベントも含め、ぐちゃぐちゃ、ごちゃごちゃを行ったり来たり。570頁、結構なボリュームなんですが行方が気になり、本を手離せない状態になりました。

 

 

 

これだけ長い話になると、登場人物たちに愛着が出てくるし、また善い人、悪い人の個々の思惑を推理するのも面白い。ストーリー自体は単純なので、その分余計なことを考えず、人々の感情にどっぷり向き合えました。

 

ということで、予定通りの大団円です。こういった小説の良いところは、善人が救われる点です。ちょっと幸薄な有爲子の昔の友達の行方がずっと気になっていたのだけど、本当に喜ばしい道を最後に歩き始めることができホッとしました。少女小説なんかもそうだけど、意地悪だった人が最終的には180度変わって善い人になったりする。本作も、そんな展開にほっこりさせられました。

 

『犬神家の一族』『八つ墓村』など本来の横溝正史作品ファンの方々は、この作品はどう読むのだろうか。わたしは詳しくないので気づけなかったけど、横溝作品に詳しい方が読めば、きっといろいろ新鮮な発見ができる作品になるのではないかなと思いました。