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【レビュー】ミネルヴァの報復:深木章子

 

 

ミネルヴァの報復:深木章子著のレビューです。

ミネルヴァの報復 (ミステリー・リーグ)

ミネルヴァの報復 (ミステリー・リーグ)

 

 

「この人か?いや、こっちの人?」

 

「鬼畜の家」が読みやすかったので、再び深木さんのミステリー!
登場人物が続々と登場する推理は苦手なんですが、草木さんの推理小説は少人数なのでありがたい(笑)「この人誰だっけ?」と血迷うことなく、話に没頭出来るのが嬉しい。(←って、推理小説の醍醐味が解ってないともいう。)

 

本作は推理といういわゆる犯人捜しの小説である部分はもちろんのこと、弁護士の立場から見た推理といった形式で、弁護士の仕事についても詳しく描かれている。

 

後で知ったのですが、著者は元弁護士とのことで、引退後に執筆活動を始めたとのこと。

 

本書を読んでいて弁護士が事務員とここまで依頼人の話をするものなのか?とか、弁護士仲間に相談するシーンもあり、守秘義務の件で何度か疑問を感じる場面があったけれど、著者が弁護士だったということで、恐らくそういうことも実際あるのだなーと。

 

横手皐月は独立して自分の法律事務所を銀座に持つ女性。彼女のもとへ大学の先輩が妻との離婚調停の件で相談にやってくる。妻は離婚に応じず、男性と一緒に暮らす愛人に慰謝料五千万円の要求を申し出る。

 

そうこうしているうちに愛人は失踪し、やがて、本妻が殺害され、さらに夫も殺害されるという事態に。しかも、亡くなった場所は弁護士会館。

 

と、かなり大ざっぱに書きましたが、犯人が誰であるのか、前半は「この人か?いや、こっちの人?」と、事件が重なるごとに読者も翻弄させられる。後半になるにしたがってぼんやり犯人が見えてくるものの確信が持てないもどかしさが付きまとう。

 

横手弁護士の仲間である睦月怜弁護士がちょこちょこ彼女にアドバイスを投げかけるのだが、それがまた混乱させられるというか・・・。わたしはこの方がひょっとして?なんて疑いの目を何度向けたことか。

 

推理小説として総合的に面白いと思う反面、弁護士という立場である主人公のキャラが今一歩落ち着きがないというか、冷静さに欠ける部分がかなり気になり、自分の持つ弁護士像から外れていたかなぁ。

 

しかしながら、例えば裁判を起こすにあたって、その人物が実在しているかどうか、本人かどうか厳密にチェックするわけではないことから、「なりすまし」が起こり得るなどの盲点も語られ、なるほどと気づかされる部分もあり面白い。また刑事じゃなく弁護士側からの推理や見解が覗けるのも興味深いところだ。

 

細かいことはともかく、グイグイ読ませるものがあり、なんだかんだ巻き込まれながら最後まできっちり読みたいという意欲を満たしてくれる作品でした。

 

推理小説読みの上級者にはちょっと物足りなさはあるかもしれませんが、私には深い推理小説より、このくらいの方が丁度いいかな・・・。