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*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【レビュー】彼女の名前は:チョ・ナムジュ

 

 

 彼女の名前は:チョ・ナムジュ著のレビューです。

彼女の名前は

彼女の名前は

 

 

 それでも「次の人」のために

 

『82 年生まれ、キム・ジヨン』の人気がすごく、図書館待ちも長そうなので、最近出版された同著のこちらを先に読むことに。韓国社会やフェミニズムを扱った作品を書かれている方だということは、なんとなく知っていた。

 

女性たちは立ち上がる。「次の人」のために。

 

帯に記されている一文を見ても分かる通り、テーマは「女性たち」。私が特に興味があったのは、韓国社会での女性の立ち位置が、わたしの知っている20年前の韓国とどう変化したか?ということ。仕事上、当時自分はたくさんの韓国人と日々接していました。女性たちからの不満は年齢に関係なく聴いていましたが、特に嫁姑問題や、親戚付き合いなど、日本以上に大変そうと感じることが多かった。

 

あくまでも個人的な印象ですが、当時は韓国人男性より女性たちの方が考えに柔軟性があり、目的意識も高かった気がします。聡明な女性が多いなぁと感じる一方、年上の男性が強く主張すると、それに対して反論するものの、やがて諦めに近い表情で黙ってしまっていた。

 

それでも若い男性を見てみると、考え方も柔らかくなっているなぁと感じることも多く、韓国社会も変わって来ているんだなと実感していた。あれから20年。現状どこまで女性が生きやすい社会になっているのか?と、気になっていました。

 

 

 

本書は28編の物語からなる。どれも物語とは言え、リアル韓国社会の姿なのだろう。キャリアの話、育児の話、家族の問題、家庭内暴力、セクハラ、貧富の差等々、これらは韓国に限らず、全世界共通の女性たちの問題で、読んでいて身近な問題として捉えながら読むことができる。胸が痛くなったり、憤りを感じたり、やるせなさを感じたり。短編なので感情の切り替えが結構ハードです。

 

本書で一番気になったのは、「生理用品」が買えなくて学校を休む女子の話。元々、かなり貧富の差がある韓国社会。韓国ドラマや映画を観ても、その差は歴然ということが判る。しかし「生理用品」すら買えないという状況、韓国ではそういうことが多々あるのかと思うと、これは本当に大きな問題だ。(これを書いていた後に、日本も同じく買えなくて困っている女性がいることが明るみになった。現在、日本でも問題になっており、支援が活発になってっ来ている)

 

タオルで止血とか、靴の中敷きをナプキン替わりに使うとか、そんなことってあってはならない。条例改正など進めてはいるらしいが、コロナでそれも止まっている状況だと言う。コロナの影響で貧困層はますます負担が大きくなっていることから、この問題の行方はかなり心配である。コロナでも月経は続くわけだから。

 

読み終えて思ったのは、わたしが20年前に彼女たちから聞いた問題は、悲しいことにそれほど変わっていないことだった。どこかで聞いた話だなと言うものがまだまだたくさん残っていた。それでも「次の人」のためにと訴え続けて行くことは大切であり、少しでも女性たちが生きやすい社会へと前進させるために、このような本が大きな役割を果たしていることに注目したい。

 

ちょうど「緊急事態宣言」が出る、出ないの時期に読んだので、いまいち集中して読めなかったのが残念です。『82 年生まれ、キム・ジヨン』は、しっかり気持ちを集中させて読みたいと思う。