東京時層探検:黒沢永紀著のレビューです。
知らない東京がまだまだたくさんある
都内に住んでいても、行ったことがない場所はたくさんある。なんとなく気にはなっているけれども、正体を知らないままになっている建物とか場所も数えきれないほど。そうこうしているうちに消えちゃったものも多数ある。本書でさらに知らない場所が増えたし、今のうちに見ておきたいものもたくさんあった。「灯台下暗し」という言葉が何度も頭の中を巡る。
さて、今回タイトルになっている「時層」とはなんぞや?と思い「はじめに」を読んでみると、「東京のちょっと変わった時間の層=時層の見える異空間」ということらしい。たしかに日々変化していく東京の街で、そこだけ時間が止まっているような異空間に偶然出遭うことがある。たくさんの時間の層を重ねた場所が醸し出す雰囲気は格別なものがあります。
本書はそんな時代を経て今もなお残る場所を丁寧に集めたもの。江戸時代からはじまり、明治、大戦間、戦後昭和を旅します。どんな場所があるかだけでもワクワクするのですが、読んでいて学べる点も良かったです。
建物ひとつとっても勉強になります。いつごろの建物なのか、知っていて見るのと、ただ漠然と見るのとでは雲泥の差。例えば戦前の「看板建築」がどういったものか、これを読んだらしっかり理解できます。
また、マンサード屋根(腰折れの屋根)という名称は初耳でしたが、たまに見る屋根で、なんであの形?ってずっと思っていたのですが、これも読んでその歴史を知ることにより納得しました。
常に更新されていく東京のなかでひっそりと残る場所。なんだか読み込むほど魅力的なところが多く、すぐにでも訪れてみたいと思わされます。
あと東京からちょっと外れるけど、「鶴見線」は是非乗ってみたい。一度も乗ったことがないけれども、どの駅も見どころが多そう。ヨーロッパっぽいホームがあったり、草が生い茂る線路があったり、無人駅の改札とか....。まさに異空間が広がっている。小旅行の最後に「海芝浦駅」からの夜景も眺めてみたいものです。
写真と説明がバランスよく掲載されています。この本を片手に行く小旅行はディープなものになりそう!近場だからいつでも行けるって思う場所はいつまでたっても行かなかったりする。自由に動ける世の中になったら、まずは近場の時層を探検するのも悪くはないと思った次第です。