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うずまきぐ~るぐる 

*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【レビュー】京都に女王と呼ばれた作家がいた 山村美紗とふたりの男 : 花房観音

 

 

京都に女王と呼ばれた作家がいた : 花房観音著のレビューです。

 

「作家・山村美紗で」であるために

 

花房観音さんと山村美紗。これはまたなんで?って疑問があったのですが、観音さんと言えば「京都」。山村美紗さんも京都で作家活動をされていた。ということで、京都繋がりなのかなって。

 

それにしてもリアル作家の話とは意外だなぁと。正直、山村美紗さんのことは知らないし、関心があったわけではない。しかし観音さん書くということは、きっと何かあるんだろうな~?と言う好奇心をもとに読みたくなった一冊なのです。

 

山村美紗と言えば、やっぱりサスペンスドラマですよね。あまり記憶にないのですが、崖っぷちとかで追い詰められている人のシーンが浮かびます。また本書でも言われていますが、駅の売店でも気軽に買える本というイメージもあります。

 

  

 

さて、「ミステリーの女王」と言われていた山村美紗。たくさんの作品を残した彼女の生涯はどんなものであったのか?様々な噂はあったものの、そのプライベートはベールに包まれていた。

 

そのひとつに結婚生活がある。タイトルにあるふたりの男とは、正式に結婚している夫。そしてもうひとりは、作家の西村京太郎氏。西村氏は美紗の家の隣に引っ越して来て、いつでも会える環境で作家活動をしていた。お互い作家活動をするうえで必要な存在であったことは確かだ。それ以上の感情があったのも、特に西村氏は美紗のことが大好きだったのだろう。

 

一方、表には決して出て来ないけど美紗の夫の作家という職業への理解、そして美紗への献身ぶりが際立つ。

 

西村氏と切磋琢磨しながら売れっこになった美紗。しかし、文学賞なるものをなかなか取れないというジレンマ。コンプレックスも大きかった。

 

花開くまで少々時間はかかったものの、後半の人生は、全身全霊、命を削りながら書くことに集中していたことが窺える。子どものころから体が弱っかった美紗。無理を押して、とにかく書いていたという気迫が伝わって来た。

 

全編を通して女性である部分、作家である部分があまりに強かったせいか、妻であり、母である部分の印象がほとんど残らなかった。どこまでも作家・山村美紗としての存在が大きい人であった。

 

さまざまなスキャンダルがあったそうだが、美紗にとってふたりの男性は必要な存在であった。そうそう、美紗が作家になるのにもう一人、大事な存在がいた。松本清張である。清張との出会いも、美紗ならではの積極的な行動があったから。いつの世も、自分の手で欲しいものを掴み取って行ける者は、ちゃんとそれなりの行動があるということがよく解る。

 

ということで、「へー、そうだったんだ」ということばかりでした。なにはともあれ、美紗の夫が現在再婚していることにちょっとホッとしている。でも、亡くなってもなお、夫に自分の絵を描かせてしまう美紗。美紗の並々ならぬ情念の強さを感じずにはいられない。

 

こうして〆の文章を書きながら、「あ!」と思う。そう、観音さんの小説の感想とどこか通ずるものがあったりする。なるほどねぇ。