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【レビュー】偽りの森 :花房観音

 

偽りの森 :花房観音著のレビューです。

偽りの森

偽りの森

 

 

 本が好き!の献本書評です。

 

自分のことをどこまで他人にさらけ出していますか?

 

「美しい四姉妹には、いやらしく哀しい秘密がある。」

 

などという意味深な宣伝文句。

 

「姉妹・いやらしい・秘密」なんていかにもな感じがムンムン漂っていますが、読み終えてみると官能だけではなく、小説の「芯」がちゃんと見えてくるような魅力がこの作家さんにはあります。

 

平安神宮の朱塗りの門をくぐるところから幕が開ける。
あっという間に京都の空気感を運んでくれる文面にまず惹きこまれます。
特に序章は観音さんの得意分野をたっぷり活かし、ガイドさんに案内されているような読み心地。

 

第二章からは、四姉妹ひとりひとりの視点で「自分と家族」、そして「家」というものについて語られて行きます。第五章は亡くなった母親についてという構成。

 

春樹、美夏、秋乃、冬香。
老舗料亭「賀茂の家」を営んでいた雪岡家の娘たちは、それぞれの人生を歩んでいるのだが、どの娘たちもこの没落した雪岡家の「家」と「親、姉妹」のことが常に頭の中にある。

 

各々の視点からの考察は、姉妹のない私にとってはかなり興味深いもので、「姉妹ってこんな風に姉や妹のことを見ているなんだなぁ。」とか、「同じ家庭環境に育っても、こうも立場によって違うのだなぁ」と。

 

家庭によっては「恋愛や性」など繊細な話題もフランクに話せちゃう家族もあるのだろうけど、気になってはいても入っていけない姉妹ならではの領域がもどかしいほどあったり、また、姉妹ゆえにめちゃくちゃシビアに見ている部分や、言いたいけど言えないことなど、細かい心理が本当にリアル。姉妹の配偶者に対する目もなかなかなものです。

 

時に姉妹に向けて、時に母、父に向けて、そして、姉妹の夫に向けてと各自が吐き出すどす黒い感情が、見てはいけないような、でも見たい・・・と、顔を覆いながらも、こっそり指の隙間から見ているような面白さがあるのです。

 

一見、何不自由なく育った娘たちに見えるけど、本当のところはこんなにもドロンドロンした感情を隠し、自分の役割を演じながら生きているのです。

 

また、今となってなってはこの世にいない母親の影が随所に顔を出す。母親の容姿・性格・過去の過ちは常に小説の中で付きまとって来るし、母の死後家を出た父親にもちょっとした謎があり、読者を飽きることなく後まで引っ張っていくあたりがニクイ。

 

さて、本書を読みながらずっと頭の中にあったのが「ジョハリの4つの窓」。

心理学の好きな方はご存じだと思うのですが、この「開放の窓」「盲点の窓」「秘密の窓」という3つの窓がチラチラ頭の中で浮かんでいました。

 

「自分のことは自分が一番よく知っている」なんて思っていても、あっさりひっくり返されるような「自分」を、案外他人の方が知っていたりするものなのかも知れません。

 

そして・・・最後に残されたもう一つの窓、「未知の窓」。
自分にも他人にもまだ誰にも知られていない未知の領域である「自己」を見つけるためにこの一家は各々旅立ってゆく。読者も登場人物たちも見られないこの「未知の窓」がどんなものなのか・・・そんな余韻を残す小説でした。

 

この家族自体、やっていることは「ちょっとなぁ」という部分も多々ありますが、人間の心の裡を見る楽しさの方が勝る面白さがありました。

 

「女の庭」もそうでしたけど、舞台は京都、他者と比較しながら自分の内面に迫っていくパターンはお得意の分野だと思うのですが、今度は是非、別の土地の女性たちを描いていただき、新しい魅力を発見してみたいなぁ・・・と思うのであります。