文豪のきもの:近藤富枝著のレビューです。
どの作家が着こなしナンバー1か?審査員気分で読むのも楽しい!
タイトル通り、樋口一葉、永井荷風、谷崎潤一郎、夏目漱石川端康成、尾崎紅葉、宇野千代......等々の文豪たち。作品を読んでいてもいなくても、彼らを思い浮かべろと言われたら、きっと着物姿を思い浮かべるのではないでしょうか。文豪は着物を着ているってイメージ、ちょっとありますよね。
本書はそんな文豪たちの作品のなかの着物、そして、本人はどんな着物を着ていたのか、エピソードを含めて紹介されています。
個人的には着物と言えばベタですが、谷崎潤一郎、そして「細雪」がパッと浮かびます。作品冒頭の袋帯を締める場面でのキユウ、キユウという音がすごく印象的です。
細雪で桜を見に出かけた姉妹たちの鮮やかな着物姿と、谷崎家が平安神宮へ行った時の4人の女性たちの写真が、重ね合わさるように頭の中に残っています。いずれも華やかでいいですねぇ。
本書では数多くの写真も掲載されています。やはり注目すべきは女性たちの着物でしょうか。特にモダンな着こなしをされていたのは、宇野千代さん。お洒落ですね。今でも人気がありそうな着物の柄が印象的。
岡本かの子さんは三十歳前後の時の写真が掲載されているのですが、粋です。柄物の半衿に格子の帯。すっきり、きりりとした感じが格好いい。これまで見たかの子さんの中で一番いいなーと思えた一枚でした。
どちらかというと、個性的で決して美人ではなかったという印象しかなかったのですが、本書を読むと、当時電車の中で男性に見そめられたというエピソードは納得できる。たぶん、物凄くオーラもあったのじゃないかな。
そして吉屋信子さん。洋装のイメージしかなかったのですが、着物を着ている貴重な写真を見ることが出来ました。こちらの着物もとてもモダン。吉屋さんの雰囲気にぴったりです。
ということで、女性の着物ばかりに目が行ってしまいましたが、永井荷風の婚礼写真など、珍しい写真もあります。写真だけ見てても結構楽しいかも!?
最後に、著者の近藤さんは2016年にお亡くなりになったそう。「本郷菊富士ホテル」など、文豪関係の本をたくさん書かれて来た方。もう読めなくなってしまうのかと思うととても残念です。