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【レビュー】荷風と戦争 :百足光生

 

荷風と戦争 断腸亭日乗に残された戦時下の東京 :百足光生著のレビューです。

荷風と戦争: 断腸亭日乗に残された戦時下の東京

荷風と戦争: 断腸亭日乗に残された戦時下の東京

  • 作者:百足光生
  • 発売日: 2020/03/15
  • メディア: 単行本
 

 

(本が好き!の献本書評です)

 

 荷風のいたあの頃、東京

 

「もし偉大な文豪とこんなことができたら」という無駄な妄想。


一人目は谷崎潤一郎とグルメ三昧。
二人目は内田百閒と全国電車旅。
三人目は永井荷風に案内される東京下町紀行。

 
のっけからくだらなくてすみません(笑)でも、わたくし、この三人の名前を見るとなんだかウキウキするんです。すごい人達なんだけど、なーんか、クスクス笑ってしまいたくなる「おっちゃんトリオ」。今回はそんなおっちゃんのひとり、永井荷風の本ということで、迷わず献本に応募させていただきました!

 
とは言え、荷風の本は『濹東綺譚』しか読んでない(笑)
「玉の井で遊んでいた人」「浅草の尾張屋で、かしわ南蛮を食べ続けていた人」...程度しか知らなかったりするのですが、その少しの情報ですら、ものすごく実が詰まっている、見どころの多い人物であるなと感じています。

 
本作は荷風が38歳から亡くなる直前まで、約40年にわたり書き続けられた日記「断腸亭日乗」の一部を考察したもの。昭和15年~20年3月までの5年間。戦争が与えた影響がどのようなものであったのか。日記に綴られた荷風の行動やぼやき、皮肉?から、かなり細かい生活状況が見えて来る。

 

 

 


例えば、昭和17年の日記。

十二月初五。(中略)門外に遊ぶ子供のはなしをきくに今日より時計の時間変わりて軍隊風になる由。午後の一時を十三時に二時を十四時などと呼ぶなりと云。


この日から交通機関の時刻表は二十四時間制が採用されたそう。荷風は外で遊ぶ子供たちの話までもキャッチして些細なことも書き綴っている。この感じ、なんだかTwitterでつぶやく私たちと似ているなぁと、ちょっと親近感。

 
また、荷風は日付の上に「・」印をつける日がある。これは、女性と性交渉を持った時に付けられるマークだそう。これも女子学生が手帳にデートの日にシール貼ったり、スタンプ押したり、「♥」マーク付けたりするのと一緒じゃなーい、荷風さん。

 
本書ではそんな印から荷風の動き(昭和15年)を分析している。(しつこいようだがと前置きしている作者さんも、お茶目である)

1月4回、2月5回、3月5回、4月4回、5月3回、6月6回、7月4回、8月5回、9月5回、10月4回、11月5回、12月4回。


荷風数え年で62歳。食糧不足で奔走を強いられている中、ものすごいペースで遊んでいる模様。元気だなぁ、お金もさぞかかったことだろう。

 
印象的だったのは、荷風と谷崎が食事をして、荷風が超ご機嫌だった様子。とても微笑ましい。わたしもこの二人の光景を目に浮かべご機嫌です!

 
かなり厳しい時代であったものの、荷風はおおむねマイペースに生きていたように思う。食料も知人からなんとなく集まってくるし、なんやかんや言いながらも、書いて、読んで、食べて、遊んでいる。

 
荷風のことばかりになってしまったが、本書は「歴史の記録」としても大変貴重な資料になり得る内容が満載である。戦争を知らない私たちではあるが、非常事態時に起きる似たような経験を、震災やコロナでしているなぁと感じる部分もある。そういう意味でも今読めて良かったと思う。

 
もし荷風がこのコロナの時代に生きていたらどうしていただろう。「店が閉まっている」とか、「夜遊びが出来ない」なんてTwitterでつぶやく@kafuがどこからか流れてきそうである。