文豪と暮らし:開発社のレビューです。
感想:文豪たちの持ち物は時が経ってもも生々しく映る
文豪が愛した物、味、場所をテーマ別にまとめた1冊。この中で一番見ごたえがあるのは、やはりその作家の息がかかった物たち。
森鴎外のビールジョッキや、樋口一葉の薩摩七宝の紅入れなどは、美術品としても愉しめる一品。
本書はものに関するエピソード、下の欄に似顔絵とちょっとした文豪のプロフィール、
左ページに大きな写真といった構成。
写真は美しく掲載されているせいか、例えば中原中也のソフト帽とか太宰の黒マントなどはドキッとするほど生々しい感じがする。
文豪たちが愛した万年筆はどれもこれも美しい。久しぶりに万年筆を見たけれど、やはり作家と言えばパソコンよりこっちの方が素晴らしい作品が出来そう・・・なんて勝手なことを考えたり・・・。
エピソードで面白かった文豪は、百閒先生と永井荷風。百閒先生、朝食はABCビスケットを食べていたそうだけど、なんかもう、朝食からしてこの方は面白い。また、カビが生えても食べ尽すという大手饅頭って!!「餓鬼道肴蔬目録」という名随筆があるらしい。元祖「飯テロ」エッセイということで、こちらも早急にチェックしなければならぬ(笑)
永井荷風も食への執着心はかなりのもの。毎日昼の12時15分丁度に店に現れ、毎度同じ席に座り、決まって「柏なんばん」を食べる。暑い日でもひたすら食べ続ける荷風。代金は決まって新札払いだったという。いやぁーこの徹底ぶり。変人と呼ばれていただけあります。荷風はこの店のトイレで倒れ、その後亡くなったという話はじわじわ来るものがある。
そうそう、荷風の食べた尾張屋さんの柏なんばん。本当に美味しそうでした。浅草と言えば天ぷら系の蕎麦って思ってましたが、今度は荷風に倣ってこちらも頂きたいです。
新札も用意しなきゃ(笑)
って、結局「味」の部門の写真に釘付けになっているわたし。食いしん坊は食いしん坊の文豪と相性がいいのであろうか?おっちゃんや百閒先生はもう私の中でちょっとした
仲間意識のようなものを感じずにはいられません(笑)