ドライブイン探訪:橋本倫史著のレビューです。
ドライブインのひとつひとつの物語を読む
やれドライブだ、やれツーリングだ、やれ、スキーだ!やれ釣り釣り!と、あちこちに車やバイクで出かけていたにもかかわらず、「ドライブイン」となると思い出せるものがない。結局、車だと高速のサービスエリア、下道だと普通の飲食店かファミレスに入ってしまっていたのだなぁと思う。あと最近では「道の駅」くらいか。
ということで、本書を読んでドライブインを再見直した次第です。
「ドライブイン」という響きからちょっとしたワクワク感。うーんと昔に観た「アメリカングラフティ」の影響か、自分が思い描くドライブインはえらくアメリカンなもの。
日本のドライブインと言えばなんだろう?トラック野郎と演歌かな?なんて思いながら本書を読んでいくうちに日本のドライブインの風景が鮮明に浮かび上がってくる。
たくさんのドライブインの歴史に触れてみると、いくつかの共通点が見えて来る。例えば始まりは店主の確固たる思いで始めたと言うよりは、「やってみたらどうか」という他者からのアドバイスがあったからという話が意外にも多い。
時が経ち先代も亡くなったりで次世代が継ぐ。辞めるという選択もある中、「やれるとこまでやる」といった感が強いのは、やはり地元のお客さんと築き上げた絆が強く、時間とともにドライブインの存在がいかに大事なところになって行ったのかが窺える。そして店主の土地に対する愛着も強く感じます。
繁盛していた時期はお店を閉める暇もなく働いたそうだ。地元のお客さんはもちろん、長距離トラックの運転手、観光バスの団体客など、お客さんが途切れない商売なのですね。またメニューのバリエーションの多さや、お茶の間のような畳の部屋、ゲームコーナーがあったりと、お客さんが寛げる環境を整えている。
そしてなによりここで語られる話の数々が、本当に「沁み入るなーー」と思わされるものが多い。店の数だけ物語がある。それは家族の話であったり、お客さんの話であったりと、モノクロの写真と共に辿るそのドライブインの歴史がどこまでも深く心に沁み込んでくる。
個人的には新潟の「石打」はスキー全盛期に随分お世話になった土地なので、ここのドライブインの話は、キュルキュルと時間が巻き戻されたような気持ちになった。また、沖縄のドライブインの歴史もなかなか読みごたえがあった。沖縄のバヤリースの話は印象的です。
ということで、ドライブインも時代の流れで消えつつある場所になってきている。すでに自分の住んでいる場所にはドライブインなるものは存在していないので、利用することは高いハードルになってしまったが、いつまでも日本の風景として残っていて欲しいと思う場所であるのは確かです。