やせれば美人:高橋秀実著のレビューです。
奥様が放つ身も蓋もない言葉は、なんだか迫力あるんだなぁ。
「妻はデブである」
…こうまで言い切ってしまう衝撃的な書き出しから、ただならぬ気配を感じ、迷わず借りた1冊。この奥様、この10年で30キロも増量してしまったそうなのですが、「私はやせれば美人」というのが口癖になっていたそうだ。(ぷぷっ。この言葉、私も好きです。すごく夢がある(笑))
そして、ここまでデブになったのは(昔は小泉今日子似だった)、「よく食べる夫につられて私も食べてしまうのだ」ということで、奥様はあくまでも「夫のせいだ」と言い切っている。
さて、この奥様がダイエットを決意したのは、心臓がバクバクして救急車で運ばれることからはじまります。単なる肥満からくる「過換気」で、検査をしても他に異常は認められなかったわけだが、これを機に痩せるためにどうしたらよいか模索し、ダイエットの成功者の話を夫婦そろって聞きに行くなどを試みるのですが…
・運動が嫌い。
・汗をかくことが大嫌い。
・基本的には一日中、リビングの大きなテーブルに向い、置物のようにじっとしている。
彼女はこの「定位置」を中心に、仕事で必要な文房具や書類などを手の届く範囲に配置。
・3キロ体重が増えれば「体重計がおかしい」とまず疑う。
(あ、私も増えるとまず体重計の故障を考えます…^^;)
という奥様を、いかにして痩せさせるか…旦那さんも様々なことに協力していくが、大きな変化や痩せたことを喜び合うという話には一切ならない。
本書の面白さは、ダイエットの大変さを知ることでも、ダイエットのノウハウを知ることでもない。ただただ、ダイエットをする女性の複雑で微妙で不可解な心理と行動を、夫の目を通して面白く描かれている点なのです。
とにかくこの奥様、結構な名言があちこちで言い放っているんですよ。本当は「言い訳」にすぎないのだけど、堂々とした態度といい、何故か正論に聞こえて来る説得力がある。おまけに、旦那さんに対してのSっ気ぶりが、めちゃくちゃ面白い。
なので、この旦那さん、奥様には口では勝てないので、ぼそぼそ心の中で呟くシーンがしばしば登場するのですが、コレがまた面白いのです。
全体的にはこの筆者・高橋さんの「愛妻日記」とも言えるくらい、奥様への愛情が伝わって来る内容。奥様はとても愛されています。病気にさえならなければ、このままでも十分って感じなんですよねぇ。
クスクスと、特に後半は何度も笑いの波が押し寄せてきて、何度か車内で本を閉じました。危険な本です。
ダイエット経験者にとっては、何故か心強い一冊。(大らかなダイエット生活をしてもいいのだという勘違いを呼ぶからかな?)
「努力には”美”がない」
ね。奥様が放つ身も蓋もない言葉は、やっぱりなんだか迫力あるんだなぁ。