雛口依子(ひなぐちよりこ)の最低な落下とやけくそキャノンボール:呉勝浩著のレビューです。
雛口依子(ひなぐちよりこ)の最低な落下とやけくそキャノンボール
- 作者: 呉勝浩
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2018/09/19
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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うえぇーーぃ、なんだよ、なんだよ。この人たちはなんなんだ?
うえぇーーぃ。
何とも言えない声が出てしまう。なんという本を読んでしまったのだろう。怒涛の3日間を本の中の人々と過ごした結果、今は嵐が去り、荒れ果てた地を途方もなく見つめているような気分です。
通常のレビュー通りあらすじに触れようと思ったものの、いざ書こうとすると何から手をつけて良いのかあたふたしてしまう。上手くまとまりそうにないし、この本の「筋」を紹介する意味が見い出せず。なので、皆さんにはこの際、とにかく思い切って「読んで巻き込まれてみる」ということをお勧めいたします。
筋はさておき、会話ベースの小説なのでとてもテンポよく読める。が、その会話自体がものすごい歪んでいるというか、何度も足を引っかけられて転んでしまうような痛みと残念な感じが付き纏う。いたって普通の会話なんだけれども、どの人も何かが足りない。足りない。足りない。。。
しかし慣れてくると「へ?」「は?」と思いながらも、このズレた感覚こそが面白いと思えてくるから不思議なのだ。
一体いつになったらまともな人が登場するのだろうか?いつかは救われるのだろうな、という期待も捨てきれずにいるのだけれも、どいつもこいつもまともじゃないことに愕然とする日々。「うえぇーーい、なんだよ、なんだよ。」と言う気分で本を開けては閉じる自分はすでにタイトルと一緒、やけくそで読んでいる。
振り返ると、暴力、監禁、殺人、虐待、洗脳。まったくとんでもないことばかりです。でもこんなひどい状況でもズッコケ感があるせいか、深刻さが出ないのが著者の上手いところかもしれません。
また、話の展開自体それほど速かったわけでもないのに疾走感があったのは、いつの間にか読者に芽生えた「先を知りたい気持ち」がそうさせるのか、いずれにしてもグイグイ読ませるものがあった。
先行書評があまりにも楽しかったので、すぐに図書館予約をした一冊。予約数は少なく昨年末中に回って来そうだったのに、結局2月に入ってから手もとに。みなさん読むのに難航しているのかしら?とジリジリした気持ちは読む前からはじまっていたと言う(笑)とにかくこういうパンチのある小説、たまに読むとまた違った刺激があって良かったと思います。先行書評の皆さまにも感謝です。うえぇーーーい。