◆インフルエンス:近藤史恵著のレビューです。
「あり得ないだろうな」という気持ちで読んでいたので、あまり動じることなくいられた。小説としての展開は面白く、先へ先へと読ませるものがあった。
校内暴力、イジメ、暴漢、DV、そして殺人。
3人の女性が暴漢事件をきっかけに次々と犯罪事件を起こしてしまうという。
誰にも語れない秘密。しかも犯罪。
それで繋がる友情?というものにかなり違和感を持ちつつ読了。
いわゆるイヤミスだからと割り切るしかないけど、
やはり人が簡単に殺されてしまう小説は読んでいて心が荒む。
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◆八月六日上々天気:長野まゆみ著のレビューです。
タイトルの日付から、語らずもこの日に広島で何が起こったのか私たちは知っている。
原爆について語らないというスタンスを貫いていると言われる長野さん。
本作品も戦争の激しく辛い場面は登場しない。
しかしながら戦争がすぐそこまで来ている状況はこの本のなかに充満し、いつか別れることになるだろうという予感を纏いながら読書するのはなんと辛いことか。
15歳の女学生の珠紀を中心に家族、親戚、結婚等の日常を描いたもの。
八月六日と言う日を迎えた彼女の身に起きた出来事はこの上なく悲しい。
そこには原爆のシーンも人々の死も描かれていないのに胸を締め付けられる悲しさが心に押し寄せる。