ホテルローヤル :桜木紫乃著のレビューです。
感想 桜木柴乃さんの描く女性達には、根底に大きな力強さがある
桜木柴乃さんは「ラブレス」という小説で初めて知り、その後、注目している作家さんの一人で、何冊か読んではいるのですが「ラブレス」を超える作品はまだないなぁ。
…などと、期待しながら新作は必ず読むようにしています。
桜木さんの小説は低空飛行で暗く哀しい内容が多く、これを読んで気持ちが明るくなるとか、共感するとか言ったものではないけど、読後になにかしらの影を心に残していくようななんだろうな…渋みがあります。
本作、最初は短編小説かと思いましたが、「ホテルロ―ヤル」という釧路郊外にあるラブホテルを中心に、少しずつ話が繋がっています。
ラブホテルとなれば男と女の話になるわけで、恋愛やセックスの話が中心かと思いきや、そんな場面もあるにはあるのですが、それよりむしろ登場人物たちの抱えている家庭環境やそこから見える複雑な事情などが、読者の気持ちを掻き立てます。
ホテルの廃墟という寒々しいシーンから話ははじまります。投稿ヌード写真撮影をしようと訪れたカップルがホテル内部に侵入。このホテルの過去への扉がここから開かれ、廃墟のシーンから設立当時まで時間を遡って話が進行して行きます。
さて、何といっても短編に出て来る人物たちのユニークな設定が興味を引きます。
2代目住職を務める20歳年上の夫と2人暮らしの幹子。
経営難の寺を守るため4人の檀家たちに体を提供して「お布施」を支援として受け取るという話は、お寺の経営状況が厳しいという世の中であるだけに妙にリアルに感じてしまいます。
他にも、舅との同居で夫と肌を合わせる時間がない専業主婦。親に家出された女子高生と、妻の浮気に耐える高校教師。働かない十歳年下の夫を持つホテルの清掃係の女性。等々…置かれている状況自体が結構みな苦しいのです。
そして、このホテルの最終日の話や、オープン前の経営者の家族の過去の話を通して、冒頭の廃墟シーンが思い出され、「そうだったのか…」とジワジワ胸に迫って来るラストへと向かいます。
暗く閉塞感もあり、この人達の明日はどうなってしまうのだろう…という重たい内容が多いのですが、桜木さんの作品に登場する女性達は、「どうにか生きて行くでしょう」という不思議な力が根底にある。これが、きっと桜木さんの描きたい女性達の持ち味
なのかと思うのです。





