砂上:桜木紫乃著のレビューです。
感想・あらすじ 今回は小説を書く女性の話ですが作品のトーンはいつもと変わらず
ひさびさの桜木さんの作品を読んで、冬が来た~~という気分に。
あっという間に北海道・江別にひとっ飛び!
桜木作品を読み続けもう雪の降る町は(小説の中で)お手のもの。
そして不幸な設定にも(小説の中で)オドオドせず。
と、自分なりに桜木作品へ向かう心構えは出来ている。
なんて思っていたけれど、今回も何だかわからないうちにどんよりしてきて一気に霧の中へ(笑)
やはり設定からモヤモヤする。
主人公令央は40歳。母親が遺した一軒家に住みながら中学の同級生が営むビストロのバイトと、元夫からの毎月の慰謝料で生計を立てている。しかし、その仕送りも夫の都合により打ち切られ・・・という早くもやるせなさ満載!
彼女は小説を書き、あちこちの新人賞の応募をしてる。
そんなひっそりした生活の彼女の元に一人の女性編集者・乙三が現れる。乙三は彼女の過去の応募作品「砂上」を書き直し本気で自分にしか書けない小説を書いてみろと提案。
この作品「砂上」が作中作となるのだが、いつしか令央や亡き母親の人生とかぶり、その境界線が曖昧になりながら読み続ける。複雑な家族関係や、編集者の手厳しい声、ダメ出しや要望、特にこの編集者の冷たい雰囲気が身にこたえるような寒さが・・・。
どんどん書くことにのめり込んでゆく彼女は母親の秘密、生き方にも深く向き合うことになる。
決して長い小説ではないのだけれども、ズンズンと重くなってゆく感じがやはりやはりと行った感じでした。
作家生活10年目という桜木さん。内容はまるっきり違うけれども、こうも小説のトーンが揃っている作品を作り続けるということに驚愕。
作品を通して決してスマートな生き方ではないけれども、様々な女性たちの生き様を見せてもらっていると思う。大好きな「ラブレス」みたいな小説もまた読みたいな。
この先もこのトーンを崩さず書き続けて欲しいです。
晴れよりも曇り空。そして大雪みたいなね。